LiteBIRD、ミッション定義審査(その2)を通過 — プロジェクト準備段階へ
JAXAが主導する国際宇宙ミッションLiteBIRDは、このたびミッション定義審査(その2)を無事に通過しました。
LiteBIRDは、宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の全天偏光観測を通じて、宇宙誕生直後に起きたと考えられるインフレーションの検証を主要な目標とする国際共同ミッションです。世界最高水準の偏光観測精度により、原始重力波の痕跡であるBモード偏光の探索を目指すとともに、宇宙論、素粒子物理学、天体物理学など幅広い科学成果の創出が期待されています。
ミッション定義審査(その2)では、ミッションの科学目標、システム構成、開発計画、国際協力体制などについて総合的な審査が行われました。今回の通過は、LiteBIRDのミッション構想と開発計画をさらに具体化していく上で重要な節目となります。今後は、プロジェクト準備段階(フェーズA)への移行に向けた所定の手続きを進めながら、宇宙機システム、観測装置、科学データ解析基盤および国際共同開発体制の検討を継続します。
LiteBIRDは、日本を中心に欧州、北米を含む多くの研究機関が参加する国際共同プロジェクトです。今回のミッション定義審査(その2)通過は、これまでミッションを支えてきた国内外の研究者・技術者・関係機関による長年の努力の成果であり、今後も世界中のパートナーと協力しながら、宇宙の起源に迫る挑戦を進めていきます。
LiteBIRDは、「宇宙はどのように始まったのか」という謎の解明を主目的とするミッションです。今までの数ある観測によってビッグバン宇宙論が確立されましたが、宇宙が高温の火の玉になる前に何があったのかはわかっていません。現在考えられている仮説の最有力候補が、佐藤勝彦氏らが提唱するインフレーション宇宙論です。この仮説では、宇宙は誕生時に急激な加速膨張を引き起こしたとされていますが、その仮説を検証し詳細を明らかにすることが、本ミッションに課せられた使命です。
ビッグバン宇宙論の確立に大きな役割を果たしたのが、宇宙マイクロ波背景放射(CMB)です。これは、「宇宙の晴れ上がり」(宇宙誕生後38万年) 時に形成された光で、宇宙のあらゆる方向から同じようにやってきます。そのCMBに見られる微かな濃淡を使い、当時の宇宙の様子を精密に調べることが可能になりました。では、さらに昔の宇宙はどうでしょうか? CMBがつくられる前の宇宙はプラズマ状態になっていたため、「光」では直接見通すことができません。そこで、本ミッションでは、原始重力波を使います。原始重力波は空間の歪みの伝搬で、CMBの偏光パターンに痕跡を残します。そのわずかな痕跡を調べることで、インフレーション宇宙論を検証します。
LiteBIRD計画では、広視野のミリ波偏光望遠鏡を搭載し、3年間観測を行います。約4000個の超伝導検出器を用いて、また熱雑音源となる望遠鏡の壁全部を5 Kまで冷却することで、高感度観測を実現します。また、12帯域で観測を行うことにより、高精度でCMBとそれ以外の電波を選り分けることができます。スキャン方法も独特です。独楽の歳差運動のような複雑な動きで、広い空をくまなくスキャンします。
本ミッションは、JAXA主導の下、イギリス、イタリア、オランダ、スイス、スペイン、ドイツ、ノルウェー、フランスの欧州各国とカナダの宇宙開発機関・研究機関と共に検討が進められており、国内では、東京大学、岡山大学等と共に開発が進められています。2036年度の打ち上げを目指しています。
2024-10-09 高エネルギー加速器研究機構 (KEK) が担当する機器の開発を担うことを断念するとの判断を受け、計画の見直し(reformation)検討を今後約1年かけて実施し、継続検討の可否を判断することが、宇宙科学・探査小委員会に報告されました。
(https://www8.cao.go.jp/space/comittee/27-kagaku/kagaku-dai63/siryou2.pdf)
2025-09-25 計画の見直し(reformation)検討の評価が行われ、来年夏の「ミッション定義審査」を目指して検討を継続・加速することが認められました。引き続き、国内外のLiteBIRDチームが一丸となって検討を進めていきます。
2026-01-26 LiteBIRDの状況が宇宙科学・探査小委員会に報告されました。
(https://www8.cao.go.jp/space/comittee/27-kagaku/kagaku-dai69/siryou2.pdf)
2026-06-26 ミッション定義審査(その2)が行われ、見直し後のミッションの意義・価値、計画の妥当性等が審査されました。その結果、宇宙科学研究所としてプロジェクト準備段階への移行が可であると判断されました。
関連リンク
- いまも続く道の途中で ― LiteBIRDリフォーメーション (ISASニュース 2026年5月号7ページ 東奔西走)
- LiteBIRD KDP-2に必要だったこと、それをやり遂げて次へ (ミッションに関連して思うこと 2025/12/17)
- LiteBIRDがミッション実現に向けて前進へ (東大Kavli IPMU 2025/12/01)
- 「LiteBIRDのリフォーメーション(‘’改革’’)」 その後 (ISASニュース 2025年11月号5ページ)
- カナダ宇宙庁長官の訪日・宇宙開発の国際協力に関するCSAプレスリリース (2025/07/09)
- LiteBIRD のリフォーメーションについて (ISASニュース 2025年2月号 4ページ)
- 誕生直後の宇宙の姿、衛星観測でどう捉えるか (岡山大学プレスリリース 2025/01/07)
- ライトバード(LiteBIRD)でビッグバン以前の宇宙を探る (ISASニュース 2016年9月号 宇宙科学最前線)
- 宇宙創生に迫る宇宙マイクロ波背景放射観測衛星 LiteBIRD 【オンライン特別公開2021 #12】| YouTube

