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この秋、「はやぶさ2」が地球に届けた小惑星リュウグウの粒子、三個が欧州で一般に公開されました。イギリスのロンドンにあるサイエンス・ミュージアムで一個、フランスのトゥールーズにあるシテ・ド・レスパスで二個の粒子が展示されています。

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ISASで、「はやぶさ2」が届けたサンプルのキュレーションを率いる主任研究開発員の矢田 達(やだ とおる)が、デリケートなリュウグウの粒子の取り扱い方法、日本から欧州まで運ぶ際の注意点などをエリザベス・タスカー准教授に説明しているところです。

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ロンドンのサイエンス・ミュージアムには「はやぶさ2」の20分の1模型も貸し出しました。模型はとても壊れやすいので、長時間のフライトの前に乗務員の方が飛行機の座席にしっかりと固定してくれました。

シテ・ド・レスパスでは当初、9月初めにトゥールーズでラグビー・ワールドカップの日本戦が行われるのに合わせて仮設スペースで展示を行っていました。この機会に宇宙科学研究所の藤本正樹副所長、JAXA宇宙教育センターの北川智子センター長がトゥールーズを訪れ、ラグビーファンや宇宙ファンの方々とも交流しました。

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フランスと日本からのメンバー、仮設展示スペースの前にて。仮設でありながら、顕微鏡に取り付けられた画面にはリュウグウ粒子が鮮明に映し出されている。写真左から、Christophe CHAFFARDON氏(シテ・ド・レスパス 教育/科学/文化担当責任者)、星野千春(JAXA)、Sébastien BARDE氏(CNES)、北川智子(JAXA)、Jean Baptiste DESBOIS (シテ・ド・レスパス最高経営責任者)、藤本正樹(JAXA)、Jean-Pierre BIBRING氏(天体物理学研究所)、Aurélie MOUSSI氏(CNES)、Nathalie JOURNO氏(CNES)。(credit: M. Huynh)

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Bibring氏、 藤本副所長、 Moussi氏が来場者へお話しする機会も。 (credit: M. Huynh).

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シテ・ド・レスパスでの展示のオープニング時には弓道の実演も。 (credit: M. Huynh)

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夕方に開催されたラウンドテーブルディスカッションには、藤本副所長、Bibring氏、Moussi氏が登壇。会場一番左はシテ・ド・レスパスの教育/科学/文化担当責任者、Chaffardon氏。上手側の机上にあるのは「はやぶさ2」の探査機モデル。登壇者の目の前に置かれているのはCNESとDLRが開発し、JAXAの火星衛星探査計画「MMX」に搭載されるローバで、火星衛星のフォボスを探査することになっています。(credit: M. Huynh)

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ラウンドテーブルディスカッションの様子。左から、Moussi氏、Chaffardon氏、藤本副所長、Bibring氏。火星衛星探査計画「MMX」に搭載されるローバが一番手前にあり、その後ろの机上には「はやぶさ2」に搭載され小惑星リュウグウの表面を探査したランダ、MASCOT(CNESとDLRにより開発)が置かれている。(credit: M. Huynh)

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10月にはシテ・ド・レスパスでの展示は新たに常設展示エリアに移転し、約1年間展示されることになっています。こちらは以前より広く、小惑星リュウグウやMASCOTの模型が写真の中央奥側、2つのリュウグウ粒子が写真右側に展示されています。粒子のうち一つは顕微鏡下に置かれ、拡大画像が画面にも映し出されています。もう一つは、世界各国の研究機関などに運ばれた際に使用されたのと同じタイプの施設間輸送コンテナ(FFTC)に収められた状態で見ることが出来ます。さらに写真右、顕微鏡の手前には、粒子を3Dプリンターで拡大して作成した模型もあり、形状が良く分かるようになっています。写真中央にあるディスプレイの上方、天井の近くには「はやぶさ2」の六分の一サイズ模型が見えます。(credit: Cité de l'espace)

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藤本正樹副所長もこの新しい展示スペースを訪れ、リュウグウが新たな住処でどう展示されているかを視察しました。藤本副所長、シテ・ド・レスパスのChaffardon氏、展示デザインを担当したEglantine LELONG氏と。(credit: Cité de l'espace)

ロンドンのサイエンス・ミュージアムでも同じく9月に展示を開始しました。私たち自らがJAXAからロンドンへ届けた「はやぶさ2」の20分の1模型と施設間輸送コンテナ(FFTC)内に収められたリュウグウ粒子の展示の準備の様子を、写真で送っていただきました。

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サイエンス・ミュージアムでの展示の準備の様子。博物館コンサーバターのKirsten STRACHAN氏(写真右)とアシスタントのLaura TONINO氏 がリュウグウ粒子の収められたFFTCをトラベルケースから慎重に取り出しているところ。(credit: Science Museum Group)

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Strachan氏、「はやぶさ2」模型が完全に組み立てられているか、展示中に問題が起きないかを慎重に確認中。 (credit: Science Museum Group)

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細心の注意を払って組み立てられてゆく展示エリアの進捗状況について話し合うStrachan氏と製作技師のNick BLYTHE氏。(credit: Science Museum Group)

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サイエンス・ミュージアムの展示が完成!左側のディスプレイでは、藤本副所長、「はやぶさ2」の津田雄一プロジェクトマネージャ、吉川真ミッションマネージャへのインタビューによる「はやぶさ2」ミッションの解説動画を再生することが出来ます。FFTCに収められたリュウグウの粒子は写真中央あたりの黄色い円の中にあり、上方にある鏡で(反射したものを)見ることも出来ます。その左側には「はやぶさ2」の模型、右側には3Dプリンターで作成した粒子の拡大模型が見えます。(credit: Science Museum Group)

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施設間輸送コンテナ(FFTC)内のリュウグウ粒子は上方の鏡でも見ることが出来ます。(credit: Science Museum Group)

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サイエンス・ミュージアムではアクセシビリティを重視していて、リュウグウの粒子はさまざまな高さから見学できるように配慮され展示されています。(credit: Science Museum Group)

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ロンドンのサイエンス・ミュージアムのメンバーとJAXAの藤本 宇宙科学研究所副所長、北川教育センター長。左から藤本副所長(JAXA)、Jessica BRADFORD 氏(サイエンス・ミュージアム 収蔵品責任者 / 主任学芸員)、Julia KNIGHTS氏(同館 副館長)、北川教育センター長(JAXA)、Heather BENNETT 氏(同館 宇宙テクノロジー担当学芸員)、 Cherie HUANG氏(同館 国際エンゲージメント・マネージャ)。

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藤本副所長がロンドンでオープンしたばかりの展示を訪れると、隣で動画を見ていた来場者に気付いていただき、その場で解説ツアーを開催!(credit: Science Museum Group)

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サイエンス・ミュージアムでの展示オープンを記念し、「Stargazing Lates」と題した閉館後イベントが開催されました。藤本副所長、Queenie CHAN氏(ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ 地球科学分野 講師), Richard GREENWOOD氏 (オープン大学惑星科学分野 主幹研究員)、Chris JACKSON氏 (ジェイコブズ・エンジニアリング・グループ サステナブル・ジオサイエンス部門主幹/地球科学者/科学コミュニケーター)らが小惑星について議論を繰り広げました。

トゥールーズとロンドンの展示はとても素晴らしい仕上がりで、「はやぶさ2」ミッションや小惑星について、多くの情報を得ることが出来ます。シテ・ド・レスパスとサイエンス・ミュージアムの方々の熱意とお心遣いによりこの素晴らしい展示が実現したことを私たちは嬉しく思うとともに、両チームの皆さまに大変感謝しています。小惑星リュウグウの粒子の展示は引き続き2024年後半にかけて継続予定ですので、是非皆様も訪れてみてください!

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(2023/11/10)