昨年12月6日、「はやぶさ2」再突入カプセルは、豪州ウーメラ立入制限区域(WPA)に無事着陸しました。カプセルは発見後すぐWPA内に設置されたQuick Look Facility(QLF)に運び込まれ、内部のサンプルコンテナが取り出されました。コンテナはQLF中の簡易クリーンラボで、ガス採取装置に取り付けられ、翌7日にガス採取がおこなわれました。7日深夜にカプセル、コンテナは現地を発ち、8日午前に宇宙研のキュレーション施設に運び込まれました。その後、サンプラーチームによって、コンテナ開封準備作業が進められ、12月15日に第1回タッチダウンで採取された粒子が確認されました。その後のキュレーションチームの作業で、試料総質量が5gを超えること、第2回タッチダウン試料には、サンプラーの採取可能最大サイズである1cm程度の礫が存在することが明らかになりました。ミッション要求「天体表面の複数地点で合計0.1g以上の試料を回収し、地球での汚染を最小限に分析に提供できること」を考えると、2回の着地で採取されたサンプルが個別に格納され、その総量が5gを越えたということで、サンプラーチームにとっては大きな喜びでした。深宇宙からのサンプルリターンとしては現時点で世界一のサンプル量になります。今後、試料は宇宙研キュレーションでの約6 ヶ月の初期記載作業の後、プロジェクトが主導する1年間の初期分析が始まります。初期分析には国内外の地球外物質の専門家が集まり、化学(圦本 尚義・北大)、粗粒粒子鉱物学・岩石学(中村 智樹・東北大)、微粒子鉱物学・岩石学(野口 高明・九州大)、揮発性物質(岡崎 隆司・九州大)、固体有機物(薮田 ひかる・広島大)、可溶性有機物(奈良岡 浩・九州大)の6つのサブチーム(括弧内はチーム代表)がリュウグウ試料の物質科学的特徴を詳細に調べます。リュウグウを通じて、太陽系の誕生と初期進化、地球の海や生命の材料の進化の解明に近づきたいと考えています。「はやぶさ2」のリュウグウへの旅は終わりましたが、リターンサンプルの科学はこれからスタートです。