運用終了火星探査機「のぞみ」

火星の上層大気を太陽風との相互作用に重点をおいて研究することを目的とした日本初の火星探査機。火星への航行中、度重なるトラブルで火星周回軌道に乗せるために必要な装置を働かすことができず、火星周回軌道投入を断念した。

小惑星探査機「はやぶさ」 電波天文観測衛星「はるか」

「のぞみ(PLANET-B)」は日本初の火星探査機で、主な目的は火星の上層大気を太陽風との相互作用に重点をおいて研究することでした。「のぞみ」は1998年7月4日に、M-Vロケット3号機によって内之浦の鹿児島宇宙空間観測所(現JAXA内之浦宇宙空間観測所)から打ち上げられましたが、途中トラブルが起こり、軌道計画の大幅な修正を行ない、はじめの予定より4年遅れて、2003年12月に火星に接近しました。しかし、度重なるトラブルで火星周回軌道に乗せるために必要な装置を働かす事ができず、その回復にぎりぎりまで全力を尽くしましたが、2003年12月9日、火星周回軌道への投入を断念しました。
「のぞみ」はほぼ火星の軌道に近い太陽を中心とする軌道上を永久に飛び続ける人工惑星となりました。

機体データ

名称(打上げ前) のぞみ(PLANET-B)
国際標識番号 1998-041A
開発の目的と役割 火星上空大気と太陽風との相互作用の研究、火星の磁場観測、火星表面・火星の衛星のリモートセンジング等
打上げ日時 1998年7月4日 3時12分
場所 鹿児島宇宙空間観測所(内之浦)
ロケット M-Vロケット3号機
質量 約540kg
形状 縦1.6m、横1.6m、高さ0.58m
ワイヤアンテナの端から端まで52m
太陽電池パドルの端から端まで6.22m
本体に27万人の人々の名前を刻んだプレートを備える
軌道種類 火星周回軌道
主要ミッション機器 火星撮像カメラ(MIC)
磁場計測器(MGF)
電子温度測定機(PET)
電子エネルギー分析器(ESA)
イオンエネルギー分析器(ISA)
電子及びイオン分析器(EIS)
極端紫外線スキャナー(XUV)
紫外線撮像分光器(UVS)
プラズマ波動並びにサウンダー観測装置(PWS)
低周波プラズマ波動計測器(LFA)
イオン質量分析器(IMI)
ダスト計測器(MDC)
中性ガス質量分析器(NMS)
熱的プラズマ分析器(TPA)
運用停止日 2003年12月9日
運用 1998年8月24日および12月8日に月スイングバイを行った。12月20日には近地点約1000kmで地球パワースイングバイを実施したが、スラスタバルブの不具合による推力不足が発生した。飛翔コース修正の結果、燃料の使い過ぎとなり、火星周回軌道投入が不可能となった。そのため、火星到着を1999年10月から2004年1月に延期した。探査機は2002年12月と2003年6月に地球スイングバイを実施して火星へ向かう軌道に投入されたが、2003年4月に通信系・熱制御系に不具合が発生し、最終的にすべてを復旧させることができず、火星への衝突回避を確実にするための軌道変更を12月9日夜に実施した。
観測成果 惑星間空間の水素ライマン・アルファ光を測定する等の各種の観測を行い、貴重なデータを残した。