夏至の日を含む一週間、スコットランドで欧州月探査シンポジウムが開催された。今年1月に月面へのピンポイント着陸を成功させたSLIM。「SLIMそのものについて、そして、そこからどういう展開をISASは狙うのか」という講演を行うため、また、SLIM月着陸においてはピンポイント着陸だけでなく小型ロボットLEV-1/2の大活躍もキーワードなので、地元高校生向けのサイド・イヴェントにおいてSORA-Qの操縦体験という企画も運営するため、藤本正樹副所長はエジンバラ空港に着陸後、南下した。

(写真上) スコットランド・ダンフリースにある大学キャンパス内の教会がイヴェント会場。イヴェントは夏至の日に開催された。

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教会内会場の様子。NASAエームズ研究所ブライアンの講演が始まろうとしている。ブライアンは毎年5月幕張で開催されるJpGUという学会のサイド・イヴェントにおいても、日本の高校生相手に熱心に講演をしてくれる。この日は、おなじみのTREKという太陽系デジタル探査サイト https://trek.nasa.gov/# の紹介かと思ったら、アポロ11月着陸時のエピソードの紹介から月を調べることで太陽系形成史がわかるという説明へ、生命探索という大きなテーマが本格化しつつあることに触れてから系外惑星の話へと展開し、最後はビッグバンまで足を伸ばすという、流れに乗った壮大な展開をやってくれた。

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講演の後、高校生は15人程度のグループに分かれて複数あるブースを回ることに。こちらのブースでは、SLIMの着陸日当日の様子とそこでLEV-1/2がいかに活躍したのかを説明する5分間の後、SORA-Qの操縦を体験してもらった。ここでは、5月の相模大野グリーンホールのイヴェントでもお世話になったタカラトミーさんにご協力をいただいている。コアなファンもいる宇宙イラストレータthgraceさんが作成してくださったポスター英語版も配布した。

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高校生相手のイヴェントに加えて一般向けの講演会が夜8時から、ウェルカムドリンクが参加者に供された後に開催された。話者は3名、SLIMに加えて、カリフォルニア工科大教授べサニーが超小型機で月面水資源探査をする話をし、SLIMのすぐ後に民間初月面着陸を成功させたイントゥーイティヴ・マシーンズ社CTOティムが着陸に至るまでの道を語った(スポーツウェアメーカーのロゴが着陸機に書いてある理由も教えてくれた)。それにしても主催者はタイムリーな話題提供者を揃える努力を惜しまなかったものだと思う。そして、その中にSLIMが入っていることは世界標準で当然なのだということを書いておきたい。

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(Photo: Greg Schmidt)

イヴェントが終わったのが午後10時前。緯度の高いスコットランドの夏至では、まだまだ夕方のような明るさだ。今年は夏至の翌日が満月だった。会場から隣町にある宿泊先まで地元名士の方が高級ドイツ車で送ってくださったのだが、車窓から見た、羊が放牧された草原の上の大きな月が美しかった。

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(2024/06/25)

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Posted by 藤本正樹 副所長 (宇宙科学探査交流棟に設置されたフォトスポットにて)