1990年代にはNASA、ESA、ISASが協力して、GEOTAILを含む複数の衛星による同時多点観測で、太陽-地球系環境を理解しようとするISTPプログラムが実施されました。その後、2000年代に入ると、ESAが打ち上げたClusterを皮切りに、地球磁気圏のその場観測は、1機の衛星による観測から、現象の時間変化と空間変化を識別することのできる編隊飛行衛星観測が主流となってきました。そしてさらに近年、地球磁気圏で起こる様々なダイナミックな現象のメカニズムを真に理解するためには、編隊飛行衛星で1つの空間サイズを観測するのでは足りず、同時に複数の空間サイズを時間と空間を分離して観測する、更に多くの機数の衛星群で観測を行うミッションが提案されて実現に向けて動き出しています。

日本でこのような複数衛星によるミッションを実現しようとすると、資金規模からも、比較的小さな打ち上げロケットを用いることからも、今後超小型衛星の使用と、超小型衛星に搭載して、必要とされる観測性能を発揮できる観測装置の開発が必須になると考えられます。現在はそのような将来に向けて、小型で高性能を有した新しい観測装置の開発が国内の複数のグループで進められています。

地球磁気圏から、更に広い太陽圏に目を向けると、2020年代の後半には、特に太陽から火星までを含む内部太陽圏において、1990年代のISTPの内部太陽圏版とも言える世界が実現されようとしています。宇宙研では、太陽観測衛星「ひので」が観測を継続し、現在開発が進められているSOLAR-Cが新たな太陽観測を開始、BepiColombo/Mioが水星磁気圏に到着します。これらの日本の衛星が欧州のSolar Orbiter、米国のParker Solar Probeなどと連携するのに加えて「あかつき」が金星周回軌道での観測を、そして「あらせ」が地球の内部磁気圏での観測を継続し、MMXが新たに火星圏の観測を開始するという、内部太陽圏を複数の衛星で同時多点観測できるまたとない好機を迎えます。

そして更にその先、恐らく地球磁気圏のその場観測で当たり前となった編隊飛行衛星観測が内部太陽圏から全太陽圏に広がり、それぞれの編隊飛行衛星ミッションが連携して太陽圏を理解するという将来がやって来るに違いありません。GEOTAILで育てられた我々研究者は、将来の研究者にその役割を引き継ぎ、かつてGEOTAILが実現したようなユニークなこれまでに無い観測を新しい技術で実現することにより、太陽圏そして更にその先の世界の理解を進めて行きたいと考えています。