「あらせ」搭載のMDP(Mission Data Processor)は多くの人の協力を経て生まれてきました。CPU採用については、国産にこだわりました。技術立国日本へのこだわりがあったのかもしれません。宇宙科学研究所 廣瀬教授と三菱重工が共同開発したSOI-SOCをその心臓部に据えました。ソフトウエアも国産のReal-Time OSを乗せるべく、元東大教授でTRONの生みの親である坂村先生のもとを訪ねました。「最新のReal-Time OSを宇宙で使えるようにカスタマイズして欲しい。静的メモリ割付、不使用の関数ライブラリは、リンク時に関数レベルでリンクしないようにして欲しい。物理タイマーもつけて欲しい。」という無茶な要求に「よし!」と笑顔でこたえて頂きました。Real-Time OSの開発はUCテクノロジーの全面的バックアップによって、"民生技術"の結晶としてReal Time OS T-Kernel 2 AeroSpaceは出来上がりました。ハードウエア的に新しい技術にも挑戦しました。科学衛星では初めてCGA(Colum Grid Array)を採用しFPGAの占有面面積を約半分にし、またメモリチップを立体構造に実装する3D-Plus(フランス)のメモリを採用することでA5基板に収まるサイズのCPUボードが完成しました。その実装は、研開本部部品グループの全面的な協力によるものです。

そして一番の感謝は、MDPを中心におこなったミッション部試験に、長時間お付き合い頂いたことです。ノミナルな手順はもちろんのこと、多岐にわたる異常ケースへの対応手順を作り上げていくことに、試験時間を気にせずに付き合って頂いたMASC(MHIエアロスペースシステムズ)やミッション機器担当者に本当に感謝します。インターフェースを切った開発、手順書通りの試験はもちろん大事ですが、問題発生時に一体となって解決する雰囲気が一番大事だと思っています。「高島さん、不具合が出ると嬉しそうにみえますよ。」と言われたことを思い出します。地上で出る不具合は「今みつかってよかった。」がいつしか合言葉となっていました。

国内・海外ベンダーのエンジニアとFace to Faceのやり取りで生まれてきたのが、MDPです。一度も止まることなく5年を迎えたMDPの開発に携わって頂いた、すべての人に感謝致します。ありがとう!