太陽よりもずっと重たい星は、その生涯を劇的な大爆発で閉じます。大爆発を起こした星は、夜空に突然現れたかのように明るく輝くので、「超新星」と呼ばれてきました。超新星爆発は、宇宙の中で起きる現象の中でも最も激しいものの一つであり、大量のエネルギーと星の内部の核融合反応でできた新しい元素を宇宙空間に放ちます。爆風の衝撃波は星からはるか離れたところまで伝わっていき、星間空間をかき乱します。爆発の後に残る「超新星残骸」は、我々に超新星爆発そのもの、あるいは星間空間に漂うガスや塵(星間物質)の進化に対する役割について教えてくれます。

「あかり」は、大マゼラン雲にある超新星残骸の、これまでにない情報を含む画像を取得しました。大マゼラン雲は、我々の天の川銀河のお供の銀河で、我々からは約16万光年の距離にあります。宇宙の中では比較的近い距離にあること、また我々から銀河の中の活動を一望できることから、星間物質の観測的な研究にはうってつけの天体です。我々は「あかり」で、大マゼラン雲の広い範囲を計画的に観測しました。これまでに40個以上の超新星残骸が大マゼラン雲の中に見つかっていますが、その約半数が「あかり」で観測した領域に入っています。「あかり」の近・中間赤外線カメラ(IRC)による観測で、我々はそのうち8天体から赤外線の放射を検出することができました。超新星残骸の、中間赤外線での詳細な画像が得られたのは、今回が初めてのことです。観測された超新星残骸の画像を図13に示します。

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図13 大マゼラン雲中の超新星残骸の疑似カラー画像
「あかり」近・中間赤外線カメラの7、11、15マイクロメートルのデータをそれぞれ青、緑、赤に割り当てて合成した。等高線は、NASAのチャンドラ衛星によって観測されたX線の強度である。各画像の下にある直線は、それぞれ20光年の長さを示している。

図13は7、11、15マイクロメートルのデータを、それぞれ青、緑、赤に割り当てて合成した疑似カラー画像です。さまざまな超新星残骸の形が見えています。多くは、きれいな球殻状の構造を見せていますが、これは主に超新星爆発の衝撃波によって掃き寄せられた星間物質であると考えられます。「あかり」の観測した、これらの超新星残骸からの赤外線放射は、X線の放射(等高線で示してある)とよく一致しています。これは、X線によって加熱されたガスがその中の塵を暖め、それが赤外線で光って見えているのだと解釈することができます。「あかり」のデータは、超新星残骸や星間塵の生成と消滅の過程に光を当てています。

星間塵は1マイクロメートルよりもずっと小さな固体微粒子で、その多くはケイ酸塩や炭素のすすなどからできているとされます。星間塵は、赤色巨星の周辺のある程度温度が低くかつガスの密度が高いところや、あるいは超新星爆発で吹き飛ばされたガス中でつくられると考えられています。一方、超新星爆発の衝撃波は、星間塵を破壊してガスに戻してしまうと考えられます。未来の星や、もしかすると地球のような惑星の種となり得るこれらの塵の生成と破壊の過程を、きちんと理解するのは大事なことです。中間赤外線の観測、とりわけ11、15マイクロメートルの観測は、「あかり」でしか得られないデータを生み出します。これらの情報から、我々は大マゼラン雲中の超新星残骸に「暖かい塵」からの放射成分を見つけました。それが意味するところは、超新星爆発の衝撃波で破壊される星間塵の量は、これまで考えられてきたものよりは少ないのではないか、ということです。今後さらに解析が進めば、我々の超新星残骸、そしてその星間塵への影響に対する理解がさらに進んでいくことでしょう。

(Koo Bon-Chul、日本語訳:山村一誠)