「宇宙研はどうあるべきか」を考えて

現在どのような仕事をされているのですか?

宇宙研で、企業でいう経営企画部に当たる仕事をしています。まず宇宙研の執行部が、宇宙研としてどういう活動を行っていくかというビジョンや組織目標を決めます。私たちは、それを実現するための具体的な戦略や計画をJAXA内外の関係者と検討して立案し、予算案を国などと調整します。そして、頂いた資金を有効に活用できるように管理し、各計画の進捗をチェックして、問題があれば解決したり執行部に計画の修正を提案したりします。

そうした仕事を行う上で、特に意識していることはありますか? また、重要なことは?

世界の中で、JAXAの中で、宇宙研はどうあるべきかを、常に考えています。Something Newを絶えず追求し、今まで分からなかったことを分かるように、今までできなかったことをできるようにすること。それが宇宙研の役割だと、私は思うのです。そうした宇宙研の役割を計画に反映させインパクトのあるミッションを実現することで、日本そして世界を元気にすることができたらいいなと思っています。

重要なのは、ビジョンの実現に最適な戦略を立てること、具体的な段取り、そして実際の渉外です。渉外については、宇宙研内、JAXA内、省庁、自治体、企業、大学など、相手も内容もさまざまなので、コミュニケーション力が求められます。

コミュニケーションは得意ですか?

実は、得意な方ではありません。ただ、短い期間ですが新聞記者をしていたことがあり、その経験が自分のキャラクターに影響を与えたのでしょう。初対面の人たちの中に飛び込んでいくことも苦ではなくなりました。JAXAではこれまでいくつも部署を替わりましたが、外部とのやりとりが必要な仕事を多くしてきました。また、宇宙ベンチャー企業に出向して営業的なこともやっていました。そうした経験も、さまざまな渉外の場で生きていると思います。

科学推進部 計画マネージャー 加持 勇介

「宇宙っていいな」を思い出して

なぜJAXAに?

高校時代は新聞部、大学時代は弁論部で、マスコミで働きたいと思っていました。実際に新聞記者として働くことができて大変充実した日々でしたが退職し、人生2度目の就職活動が終わりかけたころ、JAXAの職員募集の案内がふと目に入りました。その案内を見たとき、そういえば子どものころ宇宙が好きだったな、と思い出したのです。

宇宙が好きになったきっかけは?

絵本以外で自分の意志で初めて読んだ本が、宇宙の本でした。小学校1年生か2年生だったと思います。アマチュア天文家の関つとむさんが書いた『星空の狩人』です。確か、新しい彗星を発見するまでのことが書かれていました。とても面白くてワクワクして何回も読み、宇宙っていいな、好奇心を追求するっていいな、と思うようになりました。

好奇心を追求したいという思いはずっと持っていて、マスコミを志望したのも、根底にその思いがあったからです。宇宙が好きだったことは、すっかり忘れていました。それがJAXAの職員募集を見たときに蘇ってきたのです。そのときはJAXAを「ジャクサ」と読むことすら知らなかったのですが、勢いで応募し、面接では宇宙を好きになった本の話もして、今に至ります。

JAXAの仕事の魅力は?

JAXAで行われている計画は大きなものばかりで、成果が出るまで5年、10年とかかります。そういう計画を扱い、その実現に貢献できるというのは、大きな魅力で、やりがいがあります。特に宇宙研で行われているのは、宇宙のはじまりを探ったり、惑星を探査したり、小惑星からサンプルを持ち帰ったり、まさに好奇心の追求です。人類全体の進化に微力でも貢献できる。悪くない日々です。

JAXAでは、有人宇宙活動から政府の安全保障分野への協力、産業振興まで、宇宙開発利用を切り口に多様な活動を行っていますし、航空分野の研究開発も担っています。そうした幅広さもJAXAの仕事、宇宙の仕事の魅力です。

共存、スピード、逃げない

仕事をする上でのモットーはありますか?

周りと共存しWin-Winの関係をつくることを、いつも意識しています。2つ目はスピード。JAXAでは、それほどスピードが強く問われないと感じます。しかし、スピードを持って取り組むことは、外部の人と仕事をする上では重要だと考えています。もう1つは、課題から逃げず、自ら仕事を創り出すことです。

今後やりたいことは?

皆さんに、面白い、ワクワクする、好奇心が刺激される、そう感じてもらえるようなインパクトのあるミッションの実現に貢献したいと思ってます。

【 ISASニュース 2022年6月号(No.495) 掲載】