自分の強みを生かしたミッション支援を模索中

JAXAに入って2年目、宇宙科学プログラム室に所属されています。どのような仕事をされているのでしょうか?

メインの仕事は、まだプロジェクトの卵のようなごく初期段階にあるミッションを支援することです。私は、赤外線位置天文観測衛星JASMINE(ジャスミン)と高精度紫外線宇宙望遠鏡LAPYUTA(ラピュタ)に関わっています。

支援といっても明確なマニュアルがあるわけではなく、どのように関わるかは各自の裁量に任されています。今、自分の強みを生かしてどのような支援ができるのかを探っている真っ最中です。まずは全体の状況を把握する必要があると考え、積極的にチームに入っていってメンバーとコミュニケーションを取って検討に取り組んでいます。

ミッション支援では特定のミッションに深く関わりますが、宇宙科学プログラム室のほかの仕事では、計画段階から運用中のものまで、すべてのミッションを横断的に見ることも求められます。例えば、天文ミッションに共通する望遠鏡の開発における課題を解決するための議論を進めたり、追跡ネットワーク技術センターが主導する次期地上局の検討について宇宙研の様々なミッションの要求を取りまとめたり、複数の研究機関で実施する小規模な宇宙科学プロジェクト(例えば海外の観測ロケットや国際宇宙ステーションの飛翔機会を利用した計画など)の全体的なマネジメントを行ったりしています。

打上げや探査機の着陸などの際には人手が必要なので、宇宙科学プログラム室にも応援要請が入ります。私も、X線分光撮像衛星XRISM の打上げや小型月着陸実証機SLIMの月面着陸のときに追跡管制隊として、JAXA内外の関係機関との情報連絡を担当しました。宇宙科学プログラム室は何でもやる、何でもできるというのが、この1年半で感じたことです。

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チームで成し遂げる仕事をしたい

宇宙科学プログラム室への配属を希望したのでしょうか?

有人宇宙活動や惑星探査に関わりたいという希望を出していました。大学院では赤外線天文学の研究室で系外惑星観測を行っていたので、それとは違うことをやるのも面白いのかなと思っていました。そのため宇宙科学プログラム室に配属されたときは驚きましたが、将来的には宇宙科学ミッションに関わりたかったので今では配属されてとても良かったと思っています。

新しいことに挑戦したいと思う一方で、最も関心があったのは、やはり天文ミッションです。その思いをくんだ配属だったのかもしれません。しかも、JASMINEは系外惑星観測、LAPYUTAは系外惑星の大気観測を行うミッションなので、大学院での研究とも関連しています。

JASMINEは2024年7月、プロジェクトを進めていくうえで最初の難関ともいえるミッション定義審査を受けました。その審査を乗り越えるために、チーム一丸となって今までの検討を振り返り、文書の作成や課題の洗い出しを行いました。実は、チームで成し遂げる仕事をしたいという思いから、JAXAへの就職を選んだのです。この審査を終えてからも、JASMINEでは引き続きチームと関連企業のエンジニアの方々とで一体となって技術的な議論を頻繁に行い、望遠鏡や検出器などの概念検討を進めています。JASMINEがプロジェクト化されるまでには、まだいくつものステップがありますが、チームで力を合わせて乗り越えていきたいと思っています。

チームで成し遂げる仕事をしたいと思うようになったきっかけとは?

大学院生のとき、大阪大学が主導する国際共同プロジェクトのPRIME(プライム)望遠鏡の検討および立ち上げに参加しました。特に思い出に残っているのは南アフリカのサザーランド観測所で実施した赤外線カメラの望遠鏡への取り付け作業です。このとき、NASAの共同研究者と私たち大阪大学のメンバーが合同で現地作業を行いました。しかし、現場はトラブル続きで、とても大変でした。

NASAがカメラ開発、私たちが光学調整および観測ソフトウェア開発と担当は分かれていましたが、トラブル時には担当を超えて一緒に考えなければ、解決できません。朝から深夜まで議論を重ねる日が続きました。しかも英語です。研究室に報告し、判断を仰がなければいけないこともあります。南アフリカと日本は時差があるので、睡眠もあまり取れませんでした。無事にカメラが取り付けられ、光学調整も終わり、ソフトウェアも動作し、天の川をきれいに撮影できたときは、ものすごく感動しました。しんどかったけれども、楽しかったです。

私は望遠鏡を完成させる最終段階に携わりましたが、この望遠鏡プロジェクトは10年以上前から進められていて、私たちの研究室だけでも数十人もの人が関わってきました。みんなが力を合わせ、つないできたのです。こうした南アフリカの望遠鏡プロジェクトの経験から、チームで成し遂げる仕事をしたいと思うようになり、JAXAへの就職へとつながっていきました。

ご自身の強みはどのようなことだと思われますか?

何にでも興味を持ち、どんなことでも楽しいと思えることが、私の強みかもしれません。面白そうだと思ったら、やってみることを心掛けています。まずは、さまざまなことに挑戦し、たくさんの点を打っていきたいですね。それぞれの点が関係ないように見えても、いずれ点と点がつながると思うのです。さまざまなことに取り組めるように体力と気力と精神力を養わなければならないと、最近強く感じています。

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【 ISASニュース 2024年12月号(No.525) 掲載 】