第10章 たくましき仲間たち

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同じ釜のメシを食う

鹿児島県内之浦の発射場で衛星を打ち上げていた宇宙科学研究所時代のはなし。打上げ作業ともなると、メーカーの人も含め、約300人ものメンバーがはるばる出張する。内之浦では、いくつかの旅館に分宿する。宿ではもちろん老いも若きも「同じ釜(実は炊飯器)のメシを食う」ことになる。夜はいい雰囲気で杯を傾けるうちに、どんどん仲良くなっていく。

こうした、一緒に食事をし一緒に風呂に入るという一見何でもない日常の事柄が、実は宇宙科学研究所を中心とする「宇宙科学プロジェクト・チーム」の団結の、大きな原動力になっていたことは言うまでもない。主として男性ばかりの共同生活だから、小さな諍いは正直言ってしょっちゅうある。しかし、この共同生活は「×月×日にみんなで1つのロケットを打ち上げる」という目的を瞳のように大事にする共同生活である。この大きな目的の前には、小さな食違いは結局乗り越えられていくのである。

ロケットや衛星が実は数十万個の部品の集まりであることから分かるように、このような種類の仕事はとても1人の人間がすべてを理解することはできない。このことが、宇宙科学研究所の仕事のやり方に1つの特徴を与えている。

現在の科学はとてつもなく細分化されていて、専門をちょっと離れると、とても分かりにくくなってしまうので、いかに天文学のある分野で世界的な業績をあげていても、たとえば衛星の基本設計をしようと思うと、それを乗せるロケットの分野の若い人たちに多少の「恥」を忍んで、色々と「教えを乞う」ことになる。

頭を下げて謙虚に教えを乞う、ということを我慢できなければ、宇宙科学のプロジェクトを遂行する資格はないと言っても過言ではない。同じ人間同士、専門を越え、地位を越え、一つの歴史を築く宇宙科学のプロジェクトのために力を合わせる。いつもうまくいくとは限らないが、このような人間形成と民主的な討論を大切にしていかなければならない。

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