第10章 たくましき仲間たち

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ボウフラの浮かぶ水を飲んだ男

ある夏の打上げ実験の休日。

的川泰宣は5、6人の仲間と釣りに出かけた。実験場から海に向かって下って行き、岩場に腰をすえて、釣り糸を投げる。夏の暑い盛り。喉が乾く。持参した水筒はすぐに空になってしまった。下村が叫ぶ。

「おい、川野、水を汲んで来い!」

一行の中では川野がいちばん若い。しぶしぶ釣りの手を休めて、水筒を持って清水を組みに行った。ところが川野の持ってきた水筒は、またたく間にまた空になった。下村が再び叫ぶ。

「おい、川野!」

「またですかあ。オレがなんで行かなきゃいけないんです。」

仏頂面の川野に下村の追い打ち。

「おまえが一番若いんだろ。つべこべ言うな!」

仕方なく立ち上がった川野。のろのろと歩み去った。

川野が再び水筒に入れてきた「清水」を、みんなが回し飲みをする。

「ああ、おいし」「ああ、うまい」

口々に叫んで最後に的川が、大量に残った水を一気に喉に流し込んだ。一滴も残すものかと念を入れて水筒を思い切り傾けた瞬間、異物が的川の腕に飛んだ。見ると、実にこれがボウフラだったのである。急いで水筒を真逆様にすると、出るわ出るわ、蛭の死骸やら溺れたアリンコやら、ぞくぞくと流れ出た。

「ウワッ! こんな水を飲んだのか。みんな大丈夫だったの?」

その時、急いでみんなが顔をそむけたのに、的川は敏感に気付いた。

「さては知ってて黙ってたな。」

下村曰く「ぼくが最初に飲んだんだけど、飲んだ時、口の中に変なものが入ったので、そっと見たら蛭の死骸だったのよ。自分だけこんな目に会うなんて不公平だと思って、次の人に水筒を黙ってわたしたわけ。」

川上曰く「ぼくもボウフラにすぐ気が付いたので、ちょっとだけ飲むふりをして的川さんに渡したわけ。ところで川野、おまえ、どこの水を汲んできたんだ?」

詰問された川野答えて曰く「自分だけ水を汲みに行かせるから頭に来ちゃって、水を汲む時にその辺の土をガチャガチャとかき回しただけ。」

翌日、的川以外のメンバーはみんな「お腹が痛い」とほざいた。的川は一向に平気だったのだが、彼は今でも他の連中の腹痛は狂言だと信じている。もともと、そんなボウフラやヒルに参ってしまうような輩ではないのだ。

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