国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、平成30(2018)年4月26日(木)午前6時03分(日本標準時)に、エマルションガンマ線望遠鏡による宇宙ガンマ線観測を目的として、平成30年オーストラリア気球実験の2号機を、オーストラリア連邦北部準州のアリススプリングス空港敷地内より放球しました。この気球は重量405 kgの観測機器をガンマ線の空気による吸収が少ない高高度に打ち上げることができる満膨張体積300,000 m3(直径88 m)の大型気球です。

気球は、放球2時間後に高度38.0 kmに到達しました。そののち、十分な観測時間を確保するため、ヘリウムガスを排気して高度を下げながら風速が遅い高度で飛翔を続けました。15時間余の飛翔後、午後10時47分に指令電波により切り離された気球及び搭載機器部は、クイーンズランド州ロングリーチの南西約250 kmに緩降下しました。

放球時の地上気象状況は、天候:晴れ、風速毎秒3.0 m、気温:摂氏12.9度でした。

参考

JAXAでは日本国内での実施が困難な「長時間飛翔」、「陸上回収」、「南天観測」などをキーワードとする大型観測機器による高感度・高統計の科学観測を実施するために、オーストラリアでの気球実験を実施しています。
http://www.isas.jaxa.jp/topics/001267.html

B18-03実験は、神戸大学、名古屋大学が開発した数10 MeV~100 GeV領域のガンマ線をフェルミ望遠鏡に比べて投影角で約1/10、立体角で約1/100の解像度で観測するエマルション対生成望遠鏡を用いて、銀河面付近の密集領域に数多く見られる他波長域での天体との対応が未同定の天体、超新星残骸などの広がりを持った天体の空間構造の解明、偏光の観測など、現在の観測では未解決の課題の解決を目的としています。銀河中心の観測には南半球の空から行うことが最適であるほか、観測のためには気球の飛翔時間が長いことが不可欠であること、観測後にエマルションスタックを迅速に回収して現像を行う必要があることから、オーストラリアでの気球実験として実施しました。
http://neweb.h.kobe-u.ac.jp/labo/aoki/graine.html

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放球時の様子(吊られているのが観測器ペイロード)

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放球後の様子

飛翔航跡

飛翔航跡