開発中深宇宙探査技術実証機 DESTINY⁺

将来の低コスト・高頻度な深宇宙探査を実現する工学技術の実証と、地球への主要な有機物供給源と考えられる宇宙塵(ダスト)の科学観測を行う、理工一体のミッション。ふたご座流星群母天体である小惑星(3200) Phaethon(フェートン)をフライバイ探査する。

火星衛星探査計画 MMX 高感度太陽紫外線分光観測衛星 SOLAR-C

深宇宙探査技術実証機DESTINY⁺ (Demonstration and Experiment of Space Technology for INterplanetary voYage with Phaethon fLyby and dUst Science)は、キックステージを追加したイプシロンSロケットによって、地球周回軌道に打ち上げられます。その後、イオンエンジンによって加速し軌道高度を上げ、月スイングバイにより地球圏を脱出し、深宇宙に至ります。「はやぶさ」「はやぶさ2」のように直接深宇宙へ送り込む方式とは異なる、小型ロケットによる深宇宙探査を可能にする手法を実証します。イオンエンジンは実績のあるμ10の能力向上版を搭載しますが、太陽光の直射を受けながら運転することや日陰を経験することから、ループヒートパイプによる効率的な排熱・保温を行います。また、新しい熱制御デバイスである可逆展開ラジエータの実証も行います。さらに、4台同時運転するμ10イオンエンジンに大電力を供給するため、世界最高の出力密度を誇る薄膜軽量太陽電池パドルを初めて本格的に採用し、実証を行います。

探査対象天体である小惑星フェートンに至るまでの惑星間空間と、フェートンのフライバイ探査中には、ダストアナライザを用いた惑星間および星間ダストのその場分析を行い、組成、質量、速度、到来方向を調査します。フェートンのフライバイ探査は33km/sを超える高速度で、すれ違いざまに2台のカメラにより表層の観察を行います。フライバイ探査技術を獲得すれば、探査可能な天体が飛躍的に増えると期待されています。

さらに、共に開発されるキックステージは、小型上段固体モータとして世界トップレベルのモータマスレシオの実現を目指し、イプシロンSロケットによる深宇宙探査を可能にする技術として、将来、様々な探査ミッションに使用されることを目標としています。

機体データ

名称 Demonstration and Experiment of Space Technology for INterplanetary voYage with Phaethon fLyby and dUst Science (DESTINY⁺)
開発の目的と役割 工学:
・電気推進の活用範囲の拡大
・薄膜軽量太陽電池パドルの軌道上実証
・高速フライバイ探査技術の獲得
・小型上段固体キックステージ技術の獲得
理学:
・地球への有機物供給源と考えられるダストのその場分析による実態解明
・ふたご座流星群の母天体である活動的小惑星フェートンの謎の解明
打上げ年度 2024年度(目標)
場所 内之浦宇宙空間観測所
ロケット イプシロンSロケット(キックステージ付き)
質量 約480kg(予定)
軌道高度 初期投入軌道230km×37000km(予定)、電気推進による加速と月スイングバイにより深宇宙に至る
軌道傾斜角 約32度(予定)
軌道種類 楕円軌道、太陽公転軌道
軌道周期 初期投入軌道では約10時間
主要ミッション機器 ・DESTINY⁺ ダストアナライザ(DDA)
・小惑星追尾望遠カメラ(TCAP)
・マルチバンドカメラ(MCAP)
・μ10イオンエンジン
・薄膜軽量太陽電池パドル
・ループヒートパイプ
・可逆展開ラジエータ