第4章 初期のミューと宇宙科学

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「たんせい2」──M-3Cロケットの初衛星

M-4Sロケットにつづいて開発されたM-3Cロケットの性能確認と地磁気による衛星の姿勢制御方式の試験を主な目的として、1974年2月16日14時00分に打ち上げられた試験衛星MS-T2は、近地点高度273km、遠地点高度3,180kmの軌道に投入され、「たんせい2号」と命名された。

当初、今後の科学衛星をより正確な軌道に投入することを狙って、新たにM-4SC型を開発することを予定していたが、構造の軽量化および推進薬の性能向上の研究が進んだ結果、第2段に2次流体噴射推力方向制御(SITVC)を装着した3段式ロケットによって衛星の打上げが可能である見通しを得て、4段式から3段の制御つきM-3Cロケットが開発された。

衛星の形状は、対向面間隔75cm、高さ45cmの八角柱で、構体はアルミニウム・ハニカムを用いた八角柱の基板とその上下に取り付けた主柱部より成っている。基板は八面のアルミニウム・ハニカムで囲まれ、上部には400MHzテレメータアンテナと地磁気姿勢センサー、下部には136MHz/148MHzテレメータ/コマンド共用アンテナが取り付けてある。全長約1.3mで、重量は約56kgである。

搭載機器は、従来の共通機器の他に、このたび初めて行う衛星の姿勢制御の試験のため、

(1)衛星のスピンを落とすためのヨーヨーデスピナ
(2)衛星のスピン軸方向を制御する地磁気利用スピン軸方向制御装置
(3)姿勢変化を補償するキーピング・マグネット

が載せられた。また衛星の電源としては、太陽電池ではなく寿命約2週間の容量の酸化銀亜鉛電池が搭載された。

搭載機器の動作状況はすべて良好で、衛星各部の温度も適正に維持され、終始正常なデータを得ることができた。内之浦の第1周の受信(16時8分6秒~16時18分44秒)では、地上からのコマンドでヨーヨーデスピナを作動させ、衛星のスピンを毎秒2.3回から毎分11.3回に低下させた。また搭載した酸化銀亜鉛電池は50AHで、寿命は2週間に設計されていたが、これについてもほぼ予期した通りの結果が得られた。

「たんせい2号/MS-T2」と第3段ロケットの結合

「たんせい2号/MS-T2」と第3段ロケットの結合

「たんせい2号/MS-T2」

「たんせい2号/MS-T2」

「たんせい2号」では、これまでの衛星が毎分約180回転のスピンによって姿勢を安定化したのに対し、初めて衛星に姿勢制御装置を搭載し、姿勢制御実験を実施した。地磁気を利用した衛星の姿勢制御の実験は、2月18日から3月1日まで内之浦局からの指令電波により計5回行われた。打上げ当初軌道面にあった衛星のスピン軸を軌道面に対して垂直にする、いわゆるホイールモード実験、キーピング・マグネットを用いて軌道面の回転に追随してホイールモードを保持する実験、およびスピン軸を地軸に対して平行にする実験を行い、姿勢検出の精度内でそれらを達成しうることが確認され、後につづく科学衛星の姿勢制御のための予備実験としての目的が達成された。

この実験のために、姿勢センサーとして、ディジタル太陽センサ、スピン衛星用の地平線センサが開発され、また磁気モーメントの測定法や衛星の残留磁気モーメントをチャージャブル・マグネットや永久磁石片で打ち消す技術開発がなされた。コイルに囲まれた鳥かごのような装置の中に衛星を取り付け、ぐるぐるまわして磁気モーメントなどの測定を行ったのが、心臓に悪い試験だったことが思い出される。

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