第6章 M-3SIIの衛星たち

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超新星からの便り──「ぎんが」の科学観測

打上げ後の姿勢制御の試験も終わりに近づき、2月24日に観測機器の高圧電源投入を行った直後、小田稔から「大マゼラン雲に超新星(SN1987A)出現」の報が入った。私たちの銀河系のすぐ近くの銀河における超新星の出現は、ケプラーが見た1604年以来という大事件である。ケプラーの時代の観測手段は非常にお粗末なもの。宇宙時代が到来してから初の肉眼超新星とあって、「ぎんが」グループは色めきたち、2月26日、急きょ観測機器は観測態勢に入った。

この事件は世界中の天文学者を興奮させ、「ぎんが」にとっては千載一遇のチャンス。打上げ直後の出現は幸運なできごとであった。小田稔は、「小型でも1年に1機のペースで粘り強く科学衛星を打ち上げ続けている宇宙研の戦略の勝利だ。アメリカの物理学者Freeman Dysonも議会で“Small but quick is beautiful.”と言って日本のやり方を絶賛している」と評価した。

標準的X線源であるカニ星雲による較正と並行して観測が行われ始めたが、較正試験の方は3月中に正常に終了。3月25日から稼働を始めた全天X線監視装置が2個のX線新星を発見、ガンマ線バースト検出器も最初のバーストを3月4日に観測して、順調な滑り出しを見せた。

大マゼラン雲中の超新星

大マゼラン雲中の超新星

「ぎんが」のLAC(大面積比例計数管)

「ぎんが」のLAC(大面積比例計数管)

週に1度くらいの割合で大マゼラン雲の超新星の監視を続けるうちに、9月に入ってそれまでに取得したLACのデータを厳密に整理・検討した結果、超新星からと思われるX線を確認した。世界に先駆けた検出であった。

同じころ、岐阜県の「カミオカンデ」がこの超新星からのニュートリノを検出したことが、小柴昌俊のノーベル賞受賞につながったことはすでに有名である。

この超新星の観測データは、人類が飛翔体を手にして初めての貴重なものである。もちろんこの偶然出現したビッグ・スターの他に、本来の目的であった数々のX線源の観測が「ぎんが」によって精カ的に行われた。とくにイギリスと共同開発した大面積比例計数管の感度は、実に素晴らしいの一語に尽きた。天の川に沿って続々と見つかった超新星の残骸、暗黒星雲の芯に隠れている高温プラズマ、近接した2個の星の相互作用で発生した巨大なフレア、巨大なブラックホールの証拠と思われるセイファート銀河の中心核の激しい変動、宇宙の果てのクウェーサーのスペクトルなどをつぎつぎと発見し、身近な星から遥かなクエーサーや超銀河団まで、これまで中性子星を中心に研究を進めてきた日本のX線天文学者を、すべての天体に引きずり込んだ。

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