第6章 M-3SIIの衛星たち

カテゴリーメニュー

伝説の放射線対策

オーロラ観測という目的を実現するために「あけぼの」には高い軌道傾斜角と軌道高度が選ばれた結果、非常に過酷な放射線環境に耐える衛星の設計が要求されることになった。それまでの宇宙研の衛星の中で最も放射線被爆量の多い衛星となることが、初めから解っていたのである。その壁を乗り越えるための苦労は凄まじいものだった。

──「あけぼの」は軌道の関係で当時、宇宙研には放射線対策の専門家はいなくて、結局素人集団が俄か知識を持ち寄って対策を講じることになった。使用部品の放射線試験が必要だと言うことで、東海大学原研の高見先生やいろんな方にお願いして照射試験を行った。ともかくも相当量の部品について照射試験を実施し、弱い部品の一部は二重化して対処するなど過剰防衛とも言える対策を施した。また論理素子は耐放射線部品を米国から輸入して使用した。この米国から輸入した耐放射線論理素子はその後リード部分のメッキが剥離すると言う大問題を起こした。フライトモデルの製作過程で発生した不具合で、打上げ延期に直結しかねない重大事であった。急遽米国へ飛び、代替品の早期納入を迫ったが埒があかない。結局現有品のリードを再処理してメッキ剥離を防ぐということになった。再処理は日本電気の社内で行われたが、他社の使用分も含め1万点近いICのリードを手作業で処理した日本電気には企業の良心と気概を見た思いがした。──(鶴田浩一郎)

読みかけのページとして記録する

「読みかけのページとして記録する」について