第6章 M-3SIIの衛星たち

カテゴリーメニュー

果断の緊急停止

──“間もなくコントローラー、スタートします。よーい、はい1分前”

下村和隆の秒読みが場内に流れ、発射シーケンスは軽やかに進んでいった。

X-25秒、可動ノズル油圧ポンプ、オン。直後、TVC班の安田誠一の大きな声。

“エマストーッ!”

エマストとはEmergency Stopの略で、発射非常停止のことである。

この安田の声で発射管制室の空気は一変した。すでに機上のタイマーは起動している。全員が腰を浮かした。下村の声音だけは落ち着いていた。この緊急事態にもかかわらず、既定のエマスト手順は手際よく機能し、機上タイマーが停止したのは、打上げ予定時刻の実に18秒前であった。安田は、右側補助ブースターの油圧ポンプが起動しなかったのを目ざとく見つけ、ちゅうちょなく叫んだのであった。その果断の処置が激賞された。

そして、仕切り直しをした翌日、1990年1月24日20時46分、M-3SIIロケットの5号機は、あらためて地球周回軌道目掛けて旅立った。──(高野雅弘)

M-3SII-5号機

ロケット最上部に組み付けられた「ひてん(MUSES-A)」

ロケット最上部に組み付けられた「ひてん/MUSES-A」

読みかけのページとして記録する

「読みかけのページとして記録する」について