第6章 M-3SIIの衛星たち

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「あすか」の科学的成果

「あすか」は軌道投入後、衛星の基本共通系統の作業を正常に終了し、姿勢制御、パドル展開が行われた。そして観測機器の高圧電源投入、CCD冷却系の確認、CCDカメラのふた開けなどを行い、4月20日から試験観測に入った。20世紀の最後の数年をかけて、世界のX線天文学をリードする素晴らしい「あすか」の時代が始まったのである。

プロジェクト・マネジャーの田中靖郎の言葉。

──「あすか」は新世代のX線天文衛星第1号と呼んでもいいユニークな性能を備え、「ぎんが」の数百倍の高感度を有し、X線の撮像と高分解能分光が同時に可能な、世界で初めてのX線天文台です。世界中から観測申し込みが殺到、4~5倍の競争率が続き、観測プログラム責任者の長瀬文昭教授もうれしい悲鳴を上げました。

打上げ初期に観測機器の調整を行っていた1993年2月の打上げ早々、おおぐま座の近傍銀河M81で超新星1993Jがはじけました。1987年の「ぎんが」打上げの直後にも超新星が出現したので、「日本がX線衛星を打ち上げると超新星が現れる」などと、評判になりました。

この観測から始まり、0.5keVから10keVまでの広いエネルギーにわたって大きな有効面積を持つ多重薄板型のX線反射望遠鏡と、非常に雑音が低い蛍光比例計数管とエネルギー分解能に優れているCCDカメラの2種類の検出器によって、多くの優れた観測成果を挙げました。

観測は国際的な公募により行われ、観測時間は日米間で合意された日本50%、米国15%、日米共同観測25%、ヨーロッパ10%という割合で配分され、延べ2,112の観測が行われました。2001年4月時点で、レフリー付きの学術誌に掲載されたものが1,000編を超えました。これらの成果は、質・量・国際貢献度などにおいて、諸外国の衛星を含むほかの衛星と比較しても第一級のものといえます。──(田中)

「あすか/ASTRO-D」が観測した銀河中心のイメージ

「あすか/ASTRO-D」が観測した銀河中心のイメージ

「あすか/ASTRO-D」が観測したSN1993j

「あすか/ASTRO-D」が観測したSN1993j

「あすか/ASTRO-D」の観測による宇宙X線背景放射

「あすか/ASTRO-D」の観測による宇宙X線背景放射

爆発直後の超新星SN1993Jをとらえることに成功した後、さらに10月にはガンマ線バーストの一種、軟ガンマ線バーストを幸運にも視野に捕捉、超新星残骸中の中性子星が源であることを突き止めた。観測対象はX線星、超新星残骸、銀河系、活動的銀河中心核、銀河団等々、宇宙のすべての種類の多数の天体に及び、その成果はX線天文学を一段と高いレベルに持ち上げるものとなった。X線天文学は、「あすか」とともに新たな時代に入ったと言っても過言ではない。

1968年に発見されて以来、その正体が不明だったガンマ線バーストは、空の一角が数十ミリ秒から百ミリ秒だけピカッと光る現象である。これは不思議なことに2度と同じ方角で光ることがなかったのだが、1,000個くらい発見されたガンマ線バースターのうち3個だけ、同じ方向から繰り返しやってくるものがあり、「ソフト・ガンマ線レピーター」と呼ばれており、これはX線でもかなり強い放射を出している。「あすか」は、アメリカのガンマ線天文衛星GROと協力して、このソフト・ガンマ線レピーターの正体が超新星のなれの果てであることをつきとめた。

「あすか」はCL0016+16という銀河団を観測しており、それが我々から遠ざかるスピードが秒速12万kmであることから、我々からの距離を70億光年と弾きだした。「ぎんが」とアメリカの「アインシュタイン」衛星が観測した銀河団のうち最も遠かったのがA665で約30億光年だったから、「あすか」は一挙にその2.3倍の彼方まで見通すようになったことになる。

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