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「あすか」の落下について

1993年2月20日の打上げ後約8年間順調に観測運用を行ったきた「あすか」は、太陽活動の活発化に伴い徐々にその軌道高度を下げ、ついに2001年3月2日には大気圏に再突入し、日本時間の14時20分頃東経163度、南緯8度の海域上空で消滅した。「あすか」は8年間の長期にわたり斬新な観測データを送り続けた。

実は「あすか」はその約半年前の2000年7月14日に発生した巨大太陽フレアに起因する姿勢擾乱と、その後の緊急運用中に起こった蓄電池の電力枯渇のため2000年7月15日以降は正常な姿勢制御が行えず、観測を中止していた。従って「あすか」は打上げ後1993年4月に試験観測を開始してから正味の科学観測を行ったのは約7年3ヵ月となる。

「あすか」はこの間に近傍の星生成領域から、超新星残骸、高密度X線連星、銀河系中心、さらに遠方の銀河、活動銀河核、銀河団、宇宙X線背景放射にわたる天文学の多くの分野において、世界のX線天文学をリードする数々の成果を挙げ、当時ヨーロッパの宇宙科学の将来計画策定の会議において、「『あすか』の成果を下敷きにしなければならない」と叫ばれたほど、世界のX線衛星として大活躍した。「あすか」はドイツのROSAT衛星と共に1990年代のX線天文学の発展を支え、チャンドラ、XMMニュートン、「すざく」による新世紀のX線天文学幕開けの原動力となってその使命を終えた。

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