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気を使った衛星のハンドリング

望遠鏡を伸ばした「あすか/ASTRO-D」と長瀬文昭

望遠鏡を伸ばした「あすか/ASTRO-D」と長瀬文昭

ロケット搭載時の状態の「あすか/ASTRO-D」

ロケット搭載時の状態の「あすか/ASTRO-D」

フェアリングに格納された「あすか/ASTRO-D」

フェアリングに格納された「あすか/ASTRO-D」

「あすか」は構体本体と太陽電池パネルにより構成されており、構体本体は衛星の中央部に伸展型トラス構造のX線望遠鏡を配置している。重量はおよそ420kgである。3.5mの焦点距離を持ったX線望遠鏡は、そのままではロケットの先端の衛星格納スペースに入り切らないため、打上げ時には畳んでおいて、衛星が軌道に投入されてから望遠鏡を伸展する仕組み(伸展式光学ベンチ)になっている。姿勢制御はバイアスモーメンタム方式の3軸制御で、太陽方向による制限の範囲内の任意の方向に、1分角より高い精度でX線望遠鏡を向けることができる。

「あすか」は、焦点距離が長い望遠鏡を搭載した構成で、従来にない縦長の衛星となった。そのため専用の横型のコンテナを製作し、衛星を横にして輸送した。衛星試験のたびに衛星を横にしたり、立てたり、危険を伴う神経を使う作業が続いた。横転台車がある今では考えられないことだが、内之浦の旧衛星整備センターを使用する最後の衛星になった「あすか」は、1軸しかないクレーンとチェーンブロックを駆使してハンドリング作業を行った。

衛星内に収納されているX線望遠鏡の光学ベンチの伸展は、これが失敗するとミッションが駄目になる非常に大事な作業であった。伸展は収納状態のクランプの解除から始まり、サンシェードの展開、最終状態のラッチとすべて順調に行われ、X線望遠鏡は所定の焦点距離3.5mの位置に固定された。パドルの展開と光学ベンチの伸展により、「あすか」の軌道上での最終的な形態が完成された。この伸展式光学ベンチを採用するまでには、いろいろと議論があった。プロジェクト・マネジャーの田中靖郎の弁。

──まず難関は、長い焦点距離の鏡筒をどうするか? そのままではノーズフェアリングに納まらない。あれこれ考えたが、軌道上で首を伸ばすしか方法はない。しかし失敗すればミッション全体がおしゃかになるとの難色も出た。小野田先生に相談に行ったところ、“やれるかもしれませんね、試してみましょうよ”とおっしゃった。先生の1年かけての試験の後、GOが出た。厚くお礼申し上げたい。──(田中)

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