国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、2021年11月4日(木)に、「極域カスプ上空に発生する電離大気流出過程の研究」を目的とした観測ロケットSS-520-3号機をアンドーヤスペースセンタースバルバードロケット実験場(ノルウェー)から打ち上げました。

ロケットは正常に飛翔し、スバルバードロケット実験場南南西海上に落下しました。

ロケット飛翔結果

ロケット機種・号機 SS-520-3
打上げ時刻(現地時間) 11時09分25秒
発射上下角 80.7度
最高到達高度 756km(打上げ490秒後)
着水時刻 打上げ950秒後

なお、打上げ時の天候は晴れ、南西の風3m/秒、気温-8℃でした。

これをもちまして、観測ロケットSS-520-3号機実験は終了となります。
本実験は、高緯度電離圏のカスプと呼ばれる領域に向けてロケットを打上げ、電子・イオン・電磁場観測装置および地上に設置されているレーダーやオーロラ撮像用カメラ等による観測を組合わせて、カスプ領域に存在するプラズマ流出現象の解明を目的としています。
今後、実験により得られた観測結果を詳細に解析し、その成果を学術論文等にて公開する予定です。

今回の観測ロケットSS-520-3号機打上げ実施にご協力頂きましたノルウェー宇宙庁(Norwegian Space Agency, NOSA)をはじめ関係各方面に、深甚の謝意を表します。

実験概要

極域カスプ上空に発生する電離大気流出過程の研究
高緯度電離圏のカスプと呼ばれる領域に向けてロケットを打上げ、電子・イオン・電磁場観測装置および地上に設置されているレーダーやオーロラ撮像用カメラ等による観測を組合わせて、カスプ領域に存在するプラズマ流出現象の解明を目的としています。

なお、本実験は国際共同観測プロジェクトGrand Challenge Initiative-Cusp(※)で計画/実施されている9つのミッションのうちの1つです。

※Grand Challenge Initiative:宇宙および地球科学についての解明を目的とした、9カ国による国際協力研究です。このうちProject-cuspは日本・ノルウェー・米国3カ国によるカスプ領域解明キャンペーンです。

本実験の背景
太陽からはプラズマ粒子(太陽風)が放出されており、プラズマ粒子は地球へ到達した後、一部が磁力線に沿って極域のカスプ領域へ入り込んでいます。このプラズマ粒子が極域高度約500km以上にある希薄な大気(電離圏)へ飛びこむことによって、プラズマ粒子の持つエネルギーによって電離圏に波動が発生し、その波動によって電離圏の大気イオンが加熱・加速されて、電離圏から流出すると考えられる現象が起きています。

今回、ノルウェー・スバルバードロケット実験場からロケットを打上げることで、カスプ領域の、電離圏の大気イオンが加熱・加速されているその場所にロケットを送り込み、世界で初めて北極圏上空における大気イオンと波動の相互作用によるイオンの加熱・加速を直接測定・観測することにより、この現象のメカニズムの解明を目指します。

この大気イオンの流出現象は、金星や火星、その他多くの天体で観測されている普遍的な現象であることから、この実験によって、他の天体における大気イオンの流出メカニズムの理解も進むことが期待されます。

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SS-520-3号機 打上げの様子 (クレジット:JAXA)