LAMP観測ロケットが脈動オーロラに命中しました

脈動オーロラに向かって飛翔する観測ロケットLAMP (Justin Hartney氏提供)
脈動オーロラに向かって飛翔する観測ロケットLAMP (Justin Hartney氏提供)

JAXA、名古屋大学などを中心とする研究グループは「れいめい」衛星、「あらせ」衛星の観測などから、数秒から10秒程度で点滅するオーロラ(脈動オーロラ)の成因と、超高エネルギー電子が宇宙から地球に降り込む現象(マイクロバースト)を統一的に説明する理論を提案しています。この理論を観測的に実証するため、LAMP (Loss through Auroral Microburst Pulsation) 観測ロケット実験を行いました。LAMPは本研究グループが2015年から米国研究者と議論を重ね、NASAに提案・採択された計画です。日本は高エネルギー電子観測器(HEP)、オーロラカメラ(AIC) 2台、そして磁力計(MIM)の4機器からなる観測器パッケージ PARM2 (Pulsating AuRora and Microburst 2)を搭載しています。

ポーカーフラットにあるサイエンスオペレーションセンターで撮影した脈動オーロラ
ポーカーフラットにあるサイエンスオペレーションセンターで撮影した脈動オーロラ

開発されたロケットは、米国アラスカ州ポーカーフラットリサーチレンジの射場に移動し、2022年2月24日から打上げウインドウに入りました。同時に本研究グループメンバーによって、アラスカ北方のベネタイ、フォートユーコンにもオーロラ高速撮像用のカメラ群が展開されました。そして、打上げウインドウ10日目の3月5日2:27:30(アラスカ現地時間)にロケットが打ち上げられました。打上げ決行を決断しても、実際の打上げまでに15分、ロケットがベネタイ上空に差しかかるまでに約5分、合計約20分がかかります。祈るような時間でしたが、活発に変化する脈動オーロラに突入することに成功しました。

ベネタイの観測小屋

初期的な分析からは、ロケット搭載の各観測機器が順調に稼働し、観測データを取得したことが確認されました。また、地上からのオーロラ観測によって、実験時にアラスカの広い範囲で高速に変化する脈動オーロラが現れていたことが明らかになっています。

本実験では理想的な状態での観測に成功しました。今後の詳細な解析によって、脈動オーロラの変調機構と、キラー電子とも呼ばれる超高エネルギー電子の降りこみとの関係が明らかになることが期待されます。また、2023年にはスウェーデンで次世代型三次元大型大気レーダーEISCAT_3Dが稼働を始めます。本研究グループはEISCAT_3Dの視野内に観測ロケットを打ち上げるLAMP-2の検討を進めており、宇宙からの超高エネルギー電子の降り込みが地球の超高層大気、さらには中層大気に及ぼす影響の解明につなげようとしています。

LAMPはNASAゴダード宇宙飛行センターのほか、JAXA、名古屋大学、電気通信大学、東北大学、九州工業大学、ニューハンプシャー大学、ダートマス大学、アイオワ大学、アラスカ大学による国際共同研究チームによって開発、打上げが行われました。また、本研究はJSPS科研費 15H05747、16H06286、17K18804、18KK0100、21H04526のほか、村田学術振興財団研究助成制度の助成を受けて行われています。

関連リンク