将来計画長周期彗星探査計画 Comet Interceptor

【海外計画参加】 欧州宇宙機関(ESA)が主導する彗星探査ミッション。彗星の中でも特に始原的とされるカテゴリーに属する長周期彗星あるいはオウムアムアに代表される恒星間天体を、人類として初めて直接探査する。

国際紫外線天文衛星 WSO-UV

【概要・目的】
長周期彗星(または恒星間天体)をターゲットとし、同時多点観測を駆使して彗星核と彗星コマの観測を行うミッションです。太陽ー地球系のラグランジュ点(L2点)に待機しながら、到達可能な未知天体を、地上観測を行って最大3~4年待ち、母船と2機の超小型探査機(子機)の複数機構成で当該天体をフライバイして多点観測します。
JAXAは、3機の探査機のうちの子機1機を提供し、そこに搭載した可視カメラ、水素コロナ撮像器、プラズマ計測パッケージ(イオン質量分析器と磁力計)により彗星の観測を行います。

【期待される効果】
プロジェクト全体の成果・効果
人類として初めて訪問する長周期彗星(または恒星間天体)の核表面・コマを多角的に撮像・分光して形状、構造、コマの組成等を明らかにするとともに、同時多点観測により彗星周囲のプラズマ-太陽風相互作用を明らかにします。
その結果、太陽系科学コミュニティが標榜する二つの科学テーマ:
(1) 太陽系における生命生存可能環境の形成の理解
(2) 宇宙ガスを支配する普遍的な法則の解明
に対し、他の太陽系天体探査では得られない重要な知見を提供します。

日本の参加により得られる成果・効果
太陽系始原天体探査による太陽系形成の理解という日本の小天体探査シナリオを、はやぶさ・はやぶさ2・DESTINY+によるsnow line内側の理解から、彗星探査によるsnow line外側までを含めた総合的な理解へと拡大することが可能になります。
日本が培ってきた小型・超小型探査機技術および観測機器技術を生かした国際協力であり、本ミッションを通じてさらに日本の強みとして国際優位性を高めることが可能になります。

【ミッションの科学目的】
(1) 彗星核の科学:彗星核の真に始原的な特徴の解明
彗星は原始太陽系において形成された微惑星のサンプルです。微惑星の起源と進化、そして原始太陽系環境を理解するため、これまで探査機による彗星近接撮像が行われてきました。しかしながら、過去の探査はいずれも短周期彗星(周期<200年)がターゲットであったため、核表層の特徴が始原的なものなのか、太陽回帰を繰り返す中で後天的に獲得したものなのか、の切り分けが困難でした。
Comet Interceptorは、長周期彗星を探査することで彗星核の真に始原的な特徴を抽出します。

(2) 彗星コマの科学:彗星コマと太陽風の相互作用の解明
彗星はダスト・ガスから成るコマを形成し、さらにガスの一部はプラズマ化されて弱電離プラズマとして太陽風と相互作用します。このコマのダイナミックな物理・化学過程を理解するため、これまでフライバイ・ランデヴー探査によるその場観測が行われてきました。しかしながら、過去の探査はいずれも1機の探査機によるものであり、プラズマの空間構造と現象の時間発展の切り分けが困難でした。
Comet Interceptorは、同時多点観測によって、彗星コマ・太陽風相互作用の空間構造・時間発展を解明します。
(Image Credit: Geraint Jones, UCL Mullard Space Science Laboratory)