第6回宇宙科学研究所賞(2019年度)

JAXA宇宙科学研究所は、宇宙科学・探査プロジェクトの実施にあたり顕著な功績又は貢献のあった外部機関所属の方々に『宇宙科学研究所賞』を授与しています。

第6回宇宙科学研究所賞は、特別賞を含む以下3名の方々に、2020年1月8日に授与されました。
JAXA宇宙科学研究所はこのような機構外からの協力・支援に心から感謝するともに、この3名の方の今後ますますのご活躍を期待します。

受賞者名(敬称略)受賞件名
(特別賞)楢﨑 勝弘 宇宙用機械式冷凍機に関する理論的アプローチと実践
(特別賞)萩野 慎二 衛星・探査機の高度化およびシステム統合による宇宙科学ミッションへの貢献
木村 真一 超小型カメラ技術による深宇宙ミッションへの貢献

左より 萩野 慎二 氏、楢﨑 勝弘 氏、國中 均 所長、木村 真一 氏

各受賞者のご紹介


(特別賞) 楢﨑 勝弘 氏 (住友重機械工業株式会社)

『宇宙用機械式冷凍機に関する理論的アプローチと実践』

[受賞理由]

同氏は日本の宇宙用機械式冷凍機の研究開発を長きにわたり先導され、その冷凍機は「かぐや」「あかつき」「あかり」「ひとみ」などに搭載され数多くの世界最先端の科学的成果の創出に大きく貢献されました。この冷凍機は将来「LiteBIRD」にも搭載される予定であり、さらに「SPICA」「Athena」に向けて開発中の機械式冷凍機は到達温度・効率・寿命において世界最高性能を達成されました。

[楢﨑 勝弘 (ならさき かつひろ)]
1981年熊本大学工学部機械工学科修士修了。同年、住友重機械工業(株)入社。現在、産業機器事業部に勤務。主に宇宙搭載用の小型1段スターリング冷凍機、2段スターリング冷凍機、4K級ジュール・トムソン(JT)冷凍機1K級JT冷凍機および極低温冷却システムの開発に従事。低温工学・超電導学会会員。Cryogenic Society of America, Inc.会員。1987年Professional Engineer (Mechanical) , California, USA。2012年筑波大学工学博士。   

(特別賞) 萩野 慎二 氏 (株式会社アイネット)

『衛星・探査機の高度化およびシステム統合による宇宙科学ミッションへの貢献』

[受賞理由]

同氏は「あけぼの」「GEOTAIL」「はるか」「はやぶさ」「あかつき」等において、構想段階から開発・試験・運用にわたり衛星・探査機の高度化に貢献し、またシステムをとりまとめ主導されました。近年においても「IKAROS」「はやぶさ2」「MMO」「ERG」等に対してプロジェクトマネジメントの観点から支援をされ、これらミッションの科学成果創出に大きく貢献されました。

[萩野 慎二 (はぎの しんじ)]
1985年東京大学修士課程(工学系)修了。同年日本電気株式会社に入社。宇宙システム事業部にて衛星、探査機のシステム設計業務に従事。2019年より株式会社アイネットに所属。1989年打上の「あけぼの」(EXOS-D)から 2018年打上の「みお」(MMO)に至る多数の科学衛星の構想設計、システム設計、試験、運用までのライフサイクル全般の設計業務、プロジェクトまとめ、統括業務に従事。「はやぶさ」では基本設計から帰還までの全フェーズにわたりプロジェクトマネージャとして取りまとめに従事した。

木村 真一 氏 (東京理科大学)

『超小型カメラ技術による深宇宙ミッションへの貢献』

[受賞理由]

同氏は「IKAROS」搭載の超小型カメラ技術を発展させ「はやぶさ2」に搭載した分離カメラ及び寄付金による小型カメラCAM-Hの開発に貢献されました。特に小惑星「リュウグウ」へのタッチダウンの様子をCAM-Hが鮮明にとらえ国民にわかりやすい映像を提供できたことは科学的貢献のみならず国民の宇宙への関心を強く呼び起こした点においても大きく貢献されました。

[木村 真一 (きむら しんいち)]
1965年生まれ、1993年東京大学大学院薬学系研究科博士課程修了(博士(薬学)) 。
郵政省通信総合研究所(現 独立行政法人情報通信研究機構)をへて、2007年から東京理科大学に勤務。宇宙ゴミの除去を実現する技術の研究に従事し、技術試験衛星VII型(「おりひめ・ひこぼし」)のロボット実験やスペースシャトルディスカバリー号で実施されたManipulator Flight Demonstration、マイクロラブサット1号機などの多くの宇宙ロボット・小型衛星ミッションに参加するとともに、「IKAROS」や「はやぶさ2」「宇宙ステーション補給機(こうのとり)」の監視カメラシステムなど様々な宇宙機器開発に参加。
東京理科大学総合研究院スペースコロニー研究センター副センター長、理工学研究科宇宙理工学コース長。