第5回宇宙科学研究所賞(2018年度)

第5回宇宙科学研究所賞は以下の3名の方々に平成31年1月に贈呈されました。特に今回はうち1名の方に長年の功労に対し「特別賞」を授与しました。
JAXA宇宙科学研究所はこのような機構外からの協力・支援に心から感謝するともに、今後とも外部との連携を一層重視していく所存です。

受賞者名(敬称略)受賞件名
鳥居 祥二 (特別賞)CALETによる高エネルギー宇宙線電子の観測
永田 靖典 宇宙飛翔体への民間衛星通信網の活用と海外大気球実験への貢献
大塚 浩仁 超小型衛星打上げロケットSS-520-5号機におけるラムライン制御システムの実用化

各受賞者のご紹介

鳥居 祥二

早稲田大学理工学術院理工学研究所 教授

受賞理由

『(特別賞)CALETによる高エネルギー宇宙線電子の観測』

鳥居氏は長年に亘り我が国における飛翔体を用いた宇宙電子の精密観測を牽引され、多大な功績を残されております。特にISSへ搭載したCALETによる高エネルギー宇宙線電子の観測では、日本初の本格的な宇宙観測ミッションとして、日・米・伊の国際共同研究チームを統率し同ミッションをフルサクセスに導かれ、この最新の成果により、宇宙物理学の発展に大きく貢献されました。

[鳥居 祥二 (とりい しょうじ)]
1977年京都大学博士課程(宇宙線)単位取得満期退学。1978年京都大学理学博士。東京大学宇宙線研究所、米国ユタ州立大学、神奈川大学、2005年より早稲田大学。宇宙科学研究所、国立極地研などとの共同で宇宙電子線の気球観測を行う。2010年より宇宙航空開発研究機構(宇宙環境利用センター)の招聘職員(主幹開発員)として、国際宇宙ステーション日本実験棟「きぼう」搭載のカロリメータ方式宇宙電子線望遠鏡(CALET)の開発を行う。2015年8月の打ち上げ以降は、早稲田大学に設置したWaseda CALET Operations Centerにより、運用およびデータ受信、データ解析を統括して、研究を進めている。

永田 靖典

岡山大学大学院 自然科学研究科産業創成工学専攻 助教

受賞理由

『宇宙飛翔体への民間衛星通信網の活用と海外大気球実験への貢献』

永田氏は既存の民間の衛星通信網を活用し、宇宙飛翔体に適用可能な位置特定システムとテレメトリ・コマンドシステムの開発に貢献されました。この開発成果は、海外での大気球実験、観測ロケット実験、さらには超小型衛星EGGに搭載され、機能実証のみならず、実運用にも利用されており、今後も更なる発展が期待されております。

[永田 靖典 (ながた やすのり)]
2012年東京大学博士後期課程修了。JAXA宇宙航空プロジェクト研究員を経て、2014年より現職。
博士課程在籍時より民間衛星通信網を利用した通信システムの開発に携わり、大気球、観測ロケット、超小型衛星のフライト実験において、研究開発グループ内でのリアルタイムデータ共有システムの開発を行ってきた。
研究としては、大気圏再突入機に関する高速気体力学を専門としている。

大塚 浩仁

株式会社IHIエアロスペース ロケット技術部 技師長

受賞理由

『超小型衛星打上げロケットSS-520-5号機におけるラムライン制御システムの実用化』

大塚氏はM-Vやイプシロンロケットをはじめとする様々なロケット開発の経験を踏まえて、SS-520-5号機開発における設計基準作りに意欲的に取り組まれました。小型ロケットという、設計に特別な配慮が必要な中、わずか1年程度で基本思想の立案から、現場実務まで精力的に牽引されました。特におけるラムライン制御システムの実用化は今後ニーズの増大が見込まれ、宇宙科学の進化と発展に直接貢献するエポックメーキングなものとなりました。

[大塚 浩仁 (おおつか ひろひと)]
日産自動車株式会社 宇宙航空事業部 研究開発センタ及び宇宙技術部で、現代制御理論を応用した制御系設計、パラグライダ誘導、ダイナミックスの研究開発及びTR-IA、M-Vロケットの誘導制御系の開発と初号機運用に従事。2000年に株式会社IHIエアロスペースに移籍。M-Vロケットの全運用に携わり、その後、イプシロンロケットの立ち上げから開発のとりまとめ、初号機の打上げ、強化型イプシロン開発に従事。
はやぶさ2では、衝突機(SCI)の開発に従事。世界最小衛星打上げロケットSS-520-5の初期構想から開発のとりまとめ、打上げに従事。現在、新たな宇宙輸送系構想やAI技術を用いたシステム設計手法の研究に従事。