宇宙航空研究開発機構 サイトマップ

TOP > レポート&コラム > 宇宙科学の最前線 > MAXI(マキシ)が見張った5年間のX線宇宙

宇宙科学の最前線

MAXI(マキシ)が見張った5年間のX線宇宙 理化学研究所 MAXIチーム 専任研究員 三原建弘

│3│

中性子星連星の長周期変動

 MAXI は新天体の発見や状態変化の発見をするだけでなく、長時間の観測をして初めて分かるX線源の新しい変動の性質を見つけている。図4は、Be型X線連星パルサーA0535+26の4回続けて起こった巨大増光の様子を111.1日の連星軌道周期でそろえて描いたものである。巨大増光は115日の周期で起きていて、だんだん軌道位相が後ろにずれていっている様子が分かる。またMAXIの高感度により、その前に小増光(プリカーサ)も見つかり、同じく115日の周期で起こっていることが分かった。これはBe星周円盤が8年周期で歳差運動し、パルサー軌道との交点がだんだんずれていっていると解釈された。X線増光に応じてHα輝線の強さや速度プロファイルも変化しており、X線・可視光の両面からBe星周円盤の状態解明が行われている。


図4 Be型X線連星パルサーA0535+26の巨大増光の光度曲線
図4  Be型X線連星パルサーA0535+26の巨大増光の光度曲線 [画像クリックで拡大]
4回続けて起きた巨大増光について111.1日の連星軌道周期でそろえて示している。


 低質量X線連星の長時間観測では、アウトバーストの立ち上がりのタイプに2種類あることや、アウトバーストのピーク光度が2種類あり、それが1980年代に理論予言されていた降着円盤の2種類の不安定性伝達モードに対応していることが発見された。


恒星フレア

 MAXIの観測で意外だった結果の一つが、恒星からの巨大フレアである。RSCVnのような連星周期が短い連星系から、太陽の100万倍もの強さの巨大フレアが見つかった。また速く自転する単独の星(dMe型星)でも、太陽の1万倍もの大きなフレアが見つかった。これらは最近話題になったG型星のスーパーフレアに比べても1000倍も明るい。その放射領域の大きさは星の大きさを超えるが、そこの磁場は50ガウス程度で太陽フレアと同程度であった(図5)。連星系やdMe型星でも太陽と同じ基本機構でフレアが生じていることを示唆している。


図5 星のフレアの温度と放射領域の大きさ(エミッションメジャー)
図5  星のフレアの温度と放射領域の大きさ(エミッションメジャー) [画像クリックで拡大]
白抜きの四角は以前の結果で、それ以外がMAXIによる検出。黒四角がRS CVn型連星、ダイヤがAlgol、星が前主系列星、三角がdMe型星、赤丸がdKe型星を表す。矢印は温度下限を表す。実線と一点鎖線は放射領域の磁場とサイズを表す。

まとめ

 以上のMAXIの成果が評価されたこともあり、MAXIの装置論文は日本天文学会の欧文研究報告論文賞を受賞した(2014年5月号)。超新星や活動銀河核など変動天体の多波長監視が重要性を増す中で、X線帯のモニターを担うMAXIの役割は大きい。現在は2018年3月までのMAXIの延長審査が行われている。それには世界中のMAXIユーザー、12ヶ国20名からサポートレターが寄せられた。Swiftと「すざく」衛星に加えて、今後は、ASTRO-H、 CALET/GBM、NICER、ニュートリノ望遠鏡、重力波望遠鏡との共同観測が待っている。我々は2020年以降も、ISSの運用が続く限り、世界のX線全天モニターとして貢献していきたい。

(みはら・たてひろ)

│3│