TOP > レポート&コラム > 宇宙科学の最前線 > ARTSAT:衛星芸術プロジェクト
DESPATCHには、大きく分けて芸術ミッションと技術ミッションがあります。まず、DESPATCHという芸術作品としてのペイロードを開発・制作し地球脱出軌道に投入することで、宇宙の環境芸術作品としての「深宇宙彫刻」を実現することが、第1の芸術ミッションです。
DESPATCHには、INVADER同様にMorikawaが搭載されています。ペイロードに設置された各種センサーのデータを用いて、このMorikawaがアルゴリズミックに詩を生成し、それをCWビーコンとして送信します。プログラムコードによる生成詩の送信による、深宇宙における遠隔創造の実践が、本プロジェクトの第2の芸術ミッションです。 深宇宙からの電波は、非常に微弱になります。そこで、多摩美術大学に設置した地上局だけでなく、世界各地のアマチュア無線家に協力をお願いして、地上にある多数の小型アンテナによる受信データの断片をインターネットで集めることで、遠方からの送信データを皆で復元する「協調ダイバーシティ通信」の実験を行います。小型のアンテナを多数集めることで、巨大なアンテナに匹敵するような遠方からの微弱電波の共同受信を試みることが、本プロジェクトの第3の技術ミッションです。 らせんをモチーフにつくられた造形部の制作には、最近各方面から注目を浴びている「3Dプリンタ」を用います。3Dプリンタ制作物の宇宙機搭載実証を行い、それを一般の宇宙機の設計・製作手法の自由度拡大へとつなげていくことが、本プロジェクトの第4の技術ミッションです。 これらのミッションを実現するために、DESPATCHは通常の宇宙機とは少し異なる、以下のような方針でデザインされています。 芸術というと、何か美しかったり、不思議だったり、楽しかったりするものをつくることだと思っている人も多いかもしれません。でも、芸術は魔法でもエンターテインメントでもありませんし、僕らは何も衛星や宇宙機を使って芸術っぽいことがやりたくてこのプロジェクトを始めたわけではありません。僕らが考える芸術というのは、現実の社会の中で「いったい何が芸術なのかを見つけ出す」ことです。新しい素材やメディア、新しい表現の形式、新しいやり方の中に、新しい芸術が潜んでいます。芸術家の仕事とは、それを見つけ出して形を与え、社会に示すことなのです。INVADERの打上げも目前ですし、ARTSAT3、ARTSAT4のプランもあります。プロジェクトの進捗状況は、ARTSATプロジェクトのウェブページ*1やFacebookページ*6で随時報告していきます。ぜひ皆さんも、このARTSATプロジェクトに参加し応援してください。よろしくお願いします!
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