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宇宙科学の最前線

S-310-36号機による網展開,フェイズド・アレイ・アンテナ実験の成果速報

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網の展開実験

図2
図2 子機分離直後の様子


 図2はKuテレメトリでダウンリンクされたカメラ映像で,1は親機のL方向カメラ,2は親機のR方向カメラ,3は子機Tのカメラの映像を示す。この写真は,親機から子機が分離された直後の状況を示しており,分離が正常に行われ,網の展開も開始された様子が分かる。また子機Tに搭載されたカメラの画像からは,地球を背景に親機および分離する子機Lと子機Rが見える。この前の時点で,親機のホイールにより実験装置全体の回転を静止させる制御が正常に働いたことも,映像およびジャイロの情報から確認された。

図3
図3 網展開完了直前の様子


 網の収納は,ストローを使い,展開時にもつれと大きな抵抗が発生しない方法を工夫した。映像および加速度計の情報より,子機3機いずれも網展開時の摩擦などの抵抗による減速は小さく,分離後8秒程度で親機との最大距離10mに達し,そのときには一辺ほぼ17mの正三角形の網展開が完了したと推測される。図3は網展開完了直前の画像を示す。親機のL方向とR方向のカメラには,網展開の最終段階で引っ張り出される網上移動実験装置用の細かいメッシュが映し出されている。図4は,子機Lの角速度,加速度の履歴を表す。親機のホイール軸(Gz)以外の2軸の連成したニューテーション運動が見え,それが網からの外乱で次第に乱されていく様子が確認できる。加速度履歴からは,展開途中の摩擦などの抵抗力,最大長まで伸びたところでの反力,推進系によりバウンドバックを防ぐ制御の様子が示されている。詳細な3次元位置・速度・姿勢の解析はこれらのテレメトリ情報をもとに現在進行中で,子機のダイナミクスや制御はその結果を待って評価したいと考えている。

図4

図4
図4 子機Lの角速度・加速度履歴


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