国際共同観測ロケット実験 Chromospheric Lyman-Alpha SpectroPolarimeter(クラスプ、CLASP)は、ロケットに観測装置を載せて大気圏の外まで飛ばし、落ちてくるまでのわずかな時間に太陽を観測する実験です。現地時間9月3日午前11時1分(日本時間9月4日午前2時1分)に、アメリカ・ニューメキシコ州ホワイトサンズの実験場から打ち上げられ、予定通り観測を行いました。

太陽観測ロケット実験CLASPの模式図

© NAOJ

太陽は、光球(約6000度)の外に彩層・遷移層・コロナという高温の大気を持っています。彩層の温度は約1万度 で、コロナの温度は100万度以上にも達します。熱源であるはずの太陽表面よりも上層大気の方が熱いことはとても不思議な状況です。これまで多くの研究が行われてきましたが、彩層やコロナがどのように加熱されるのかを明らかにすることは、未だに大きな疑問として残されています。太陽観測衛星「ひので」によって、彩層・遷移層・コロナの加熱には磁場が重要な働きをしていることがわかりました。彩層~コロナがどのように加熱されるかを明らかにするためには、「ひので」が観測する太陽の表面の磁場に加えて、さらに上空にある大気においても磁場の精密・高空間分解能観測が不可欠なのです。

太陽内部の模式図

図1 © JAXA

CLASPは 世界で初めて、太陽表面とコロナの間の薄い大気の層である彩層の磁場を測ることを目的にしたロケット実験です。彩層の磁場は「ひので」が測定する太陽表面の磁場よりも弱いため、研究チームは、新しい原理(ライマンα線のハンレ効果)を用いて測定することに挑戦しました。そのための理論的検証をスペインやノルウェーの研究者の協力を得て行い、アメリカやフランスとの国際協力によってCLASPは開発されました。

CLASPによる観測では、望遠鏡内部で波長板と呼ばれる光学素子を、非常に高精度で一様に回転させる必要があります。清水敏文(JAXA宇宙科学研究所)をリーダーとするグループは国内メーカーと協力し、2020年代に実現を目指す次世代太陽観測衛星SOLAR-Cに必須な要素技術として、高精度な回転駆動装置を開発してきました。この開発で試作したメカニズムが、CLASPに搭載され、計測装置の中核として使用されました。

DCブラシレスモータを用いた回転駆動装置の写真

図2 DCブラシレスモータを用いた回転駆動メカニズム。中空部分に国立天文台で新規に開発されたライマンα線用の波長板が取り付けられ(写真はアルミのマスダミーが取り付けられている)、その波長板を高い精度で一様に連続回転させる。© JAXA

CLASPの観測にあわせて、太陽観測衛星「ひので」に搭載された望遠鏡も、同じ観測領域の観測を行い、貴重な観測データを取得しています。今後、得られたデータを詳細に解析し、太陽の彩層の磁場の情報を得ることになります。