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宇宙科学の最前線

自然が織りなす光のショー惑星オーロラの魅力 Sarah V. Badman JAXAインターナショナルトップヤングフェロー 宇宙プラズマ研究系

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 太陽系にいくつの惑星があるか、ご存知でしょうか。9個、と答えた方は調べ直す必要があります。太陽のまわりを地球と比べて30倍以上も遠くで公転する小さな冥王星が、国際天文学連合により惑星ではないと判定されたのは最近のことです。

 残りの8個の惑星はそれぞれに個性的な世界を持っており、それらの特徴は惑星を形づくる材料と太陽からの距離によって決まります。ご存知のように、太陽系中心にある太陽が、地球を含めた惑星たちに光と熱を供給しています。実は、光だけでなく、太陽はその上層大気の粒子も周囲へと放出しています。これは太陽風と呼ばれ、とても希薄なもの(月と同じ体積の中にある太陽風粒子の数は、清涼飲料のボトル1本の中にある分子の数と同じぐらい!)ですが、惑星環境に大きな影響を及ぼすものです。


夜明けの女神

 我々の地球について考えてみましょう。地球は固有磁場を持っています。その磁力線は北極と南極とをつなぎつつ宇宙空間にも広がっており、地球周囲の宇宙空間にカゴで囲まれたような隙間(訳注:磁気圏)をつくります。我々の目には地球の磁力線や太陽風は見えませんが、それらが相互作用するとき、自然界で最も魅力的な光のショーが展開します。これがオーロラです(極光とも呼ばれます。表紙写真)。オーロラは極域の夜空に現れる、まばゆい光が躍動する現象です。オーロラという言葉の起源は、それが夜空を照らす様子から、古代語で夜明けを意味する言葉にあります。しかし、太陽の光にその原因があるわけではなく、あるいは、古代人が考えていたように勇者の武器が照り返しているわけでも、神からのメッセージというわけでもありません。

 オーロラは、太陽から飛んできた太陽風の粒子(電子やイオン)が地球周囲のカゴを形づくる磁力線に捕まった後に大気に突入して生まれます。大気に突入した太陽風粒子は地球大気の粒子と衝突し、大気粒子をエネルギーの高い状態にして光を放出させるのです。最も普通に見られるオーロラは緑色をしていますが、これは上空の酸素原子からの光です。時には赤や紫色のオーロラが見られますが、これは大気に突入する太陽風粒子のエネルギーが変わって光を放出する大気粒子が別のものになるためです。

 オーロラの形は、細いリボン状やカーテン状だったり、あるいは全天を覆う雲のようだったりします。オーロラは明滅を繰り返したりうねりながら夜空を移動したり、非常に素早くその姿形を変えることもあり、写真に撮ろうとすると消えてしまうこともしばしばです。


オーロラが映す宇宙嵐

 北極と南極に一つずつ、それぞれのまわりを巡る環状の領域(オーヴァル)を思い浮かべてください。オーロラはその領域に出現します。その様相は地球の上空から撮影する科学衛星の観測によってとらえることができ、これまでにさまざまな太陽風条件での観測が行われてきました。オーロラは、ちょうどブラウン管のテレビのように、上空から電子が大気に飛び込んで光を出すことで、地球周辺の宇宙空間で何が起きていて、地球磁場と太陽風がどのように相互作用しているのかを映し出していると考えることができます。最も強いオーロラは、磁気嵐と呼ばれる、太陽から通常よりも大量の粒子が押し寄せてきて地球周囲に広がる磁気圏を占拠するときに発生します。磁気圏は、地球から出て宇宙空間へと延び、また地球へと戻る磁力線がつくる、やわらかいカゴで囲まれたような領域であり、太陽風の変動の影響を大きく受けます。磁気嵐のときには、より広い範囲で磁気圏から大気へと電子が注入されるのです。1870年に実際にあった極端な事例では、北極から遠く離れた北アフリカでオーロラが目撃されたこともありました。

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