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宇宙科学の最前線

小さな回路で大宇宙の情報を伝える〜最先端電波工学技術による宇宙通信〜 宇宙情報エネルギー工学研究系 教授 川崎 繁男

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はるかなる宇宙と会話するクリーン宇宙通信

 日進月歩の発展を続ける電子情報通信技術により、情報通信社会における我々の生活は、大変豊かになってきました。一方で、エネルギー環境問題は地球規模で解決しなければならない課題として、近年各方面で取り上げられています。そして、それらの問題を解決する方法の一つとして、宇宙開発が再び脚光を浴びているものと思われます。
 少し難しい言葉で言うと、電波通信工学を基本とした宇宙技術として、我々は宇宙通信工学、宇宙電波科学、無線通信エネルギー伝送の3つの研究分野を取り上げました。宇宙通信工学は、図1に示した直径64mの大型アンテナを持つ臼田宇宙空間観測所のような地上局と「はやぶさ」のような宇宙機の交信に必要な技術で、最近では金星や火星探査といった深宇宙との通信にも使われます。また、宇宙電波科学では、マイクロ波、ミリ波、テラヘルツ波といった携帯電話などに用いられる高い周波数の電波のための超低雑音増幅器の開発が必要です。さらに、クリーン再生エネルギー利用の観点から、太陽電池を電源とした、情報・通信とエネルギー・電力を無線で同時に送る無線通信エネルギー伝送技術があります。これは新しい電波利用法として注目されており、宇宙太陽発電衛星(SSPS)や図2に示した災害救助ロボットシステム、宇宙服用センサーネットワークシステムへの展開が期待されています。さらに、一般的な応用例として、電気自動車への無線給電や老人介護用無線ウェアラブルヘルスモニタリングセンサーなどが挙げられ、高性能に加えて経済性の追求も要求されます。周波数という観点から見ると、これらには携帯電話や超高速無線通信、空港の安全チェックのためのセキュリティシステムなどに用いられるマイクロ波のような周波数の高い電波(高周波)が使われます。
 このような現状の中で、我々は「はるかなる宇宙と会話するクリーン宇宙通信」を目指し、未知なる宇宙の開拓と宇宙に優しい電子通信技術のための研究開発を行ってきました。さらに、宇宙通信で培った技術を日常生活に役立たせるべく、日夜奮闘努力しています。


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図1 臼田宇宙空間観測所64mパラボラアンテナと使用可能な送信電波用アンプ


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図2 災害救助ロボットへの無線通信エネルギー伝送
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