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宇宙科学の最前線

固体ロケットの研究 世界一から世界一への挑戦

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はじめに

 昨年引退したM-Vロケットは、全段固体で惑星探査にも活用できる、世界で唯一かつ最高性能の固体ロケットシステムです。各サブシステムの設計には我が国独自の固体ロケット研究50年の叡智がちりばめられていて、ロケット全体は光り輝く技術の結晶といえます。
 一方で、M-Vロケットは、性能に特化して最適化したためにコストが高いこと、加えて少ない開発費を機体の開発に優先的に投入したため組立・点検などの運用や地上系のコンセプトが昔のまま、という弱みがありました。内之浦での打上げ準備には多くの人手と日数がかかり、結果として、半年より短い間隔で打上げを行うことは物理的に困難な状況でした。これでは、液体ロケットに比べて打上げが簡単という固体ロケット本来の真価を十分に発揮していたとはいえません。
 他方、このようなロケット側の状況に対して、サイエンスの側でも新たなうねりが起こっています。これまでM-V級の科学衛星により世界をリードする観測成果が続々と得られてきたわけですが、衛星の大きさ故にコストと開発期間がかかり、打上げの機会は限られた頻度にとどまっています。小型でもいいからもっと高頻度に衛星を打ち上げたい。そこで、大型のミッションが今後も必要なことはもちろんですが、これからは低コストで機動性の高い小型衛星ミッションもどんどん推進していこう、というのがサイエンスの新たな方針です。
 このようなことを背景にして、次期固体ロケットで目指すのは、単に高性能というだけでなく、低コストで運用性のよい、つまり新しい時代のロケットシステムです(図1)。



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図1 シンプルな射点設備と次期固体ロケット(想像図)




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