宇宙航空研究開発機構 サイトマップ

TOP > レポート&コラム > 宇宙科学の最前線 > 宇宙大航海時代への予感

宇宙科学の最前線

宇宙大航海時代への予感

│1│


「はやぶさ」順調に航行中

漆黒の空間に3つの紫電の光を灯(とも)し「はやぶさ」は針路を地球にとり、航行を続けていることでしょう。管制室のコンソールに流れる数値だけでは飽き足らず、飛んで行って、イオンエンジンのグリッドの穴はどうなっているのかとのぞき込み、温度センサの貼っていないあそこの温度は大丈夫かと手をかざしたい衝動に駆られます。
2003年5月9日、MUSES-Cを搭載したM-Vロケット5号機は、ごう音とともに青空へ消えてゆきました。地球を1周して鹿児島局で再び電波をとらえたときには、「はやぶさ」という新しい名前が付いていました。15年間かけて研究開発したマイクロ波放電式イオンエンジンμ-10(ミューテン)が、やっと“宇宙生まれ(space-borne)”となった瞬間です。5月末から慎重に1台ずつプラズマ点火、イオン加速を行いました。通信波のドップラーシフトから、イオンエンジンによって「はやぶさ」が加速され速度が変化するさまを実時間で確認できたことは、望外の喜びでした。試験調整が終了して、7月からは地球からの実時間監視なしで24時間連続で加速を続ける巡航運転が始まりました。年末年始の休止期間を挟み、2004年2月末には作動積算時間1万時間・ユニットを達成しました。
「はやぶさ」は、2004年5月ごろに地球のそばをかすめる軌道を確保したことになります。このとき、これまでイオンエンジンによって加速してためた速度ベクトルを、目的天体である小惑星“ITOKAWA”の方向へねじ曲げます。その後も加速を続け、2005年秋、ITOKAWAに到着する計画です。



図1

図1 マイクロ波放電式イオンエンジンの2台同時作動(地上試験)
上:開発モデル 下:プロトタイプモデル

│1│