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ASTRO-F衛星 早わかり
2005年12月12日(月)に東京で、また22日(木)に鹿児島で、2006年2月に打上げが予定されている赤外線天文衛星ASTRO-Fの勉強会が開催されました。これは新聞記者の方々の要望に応えて開かれたものです。その日の ASTRO-Fについてのレクチャーの講師をした村上浩教授(東京)、中川貴雄教授(鹿児島)の話と配布資料をもとに、ASTRO-F衛星の概要をまとめましたので、ここにご紹介します。
※本文中の図はそれぞれクリックで拡大することができます。必要に応じてご覧ください。
1.赤外線で宇宙を見て何を知りたいのか?
おおづかみに言えば、赤外線による宇宙観測は二つの質問に答えることを目的としています。一つは、この宇宙がどうやって造られたかということ。もう一つは、この宇宙の中で私たちは独りぼっちなのかということです(図1)。
この宇宙はどのように作られたのか
第一の「この世の中がどのようにして造られてきたか」という点については、まず銀河がどうやって造られてきたのかということを明らかにしたいと思っています。ご存知の方も多いでしょうが、私たちの宇宙は137億年前にビッグバンという事件で始まりました。そのビッグバンから10万年くらい経ったところの宇宙を現在見ることができます。
図2の左がそうです。本当にこういうふうに見えるのです。これを見ると、宇宙はかなりのっぺらぼうですね。見ている波長は1mmぐらい(電波と赤外線の境目ぐらい)ですが、それで見るとビッグバンのときの宇宙の名残り火が見えていることになります。ものすごく不思議なことは、宇宙中が非常に一様だということです。
この電磁波にも実は多少むらがありますが、そのむらがどのくらいかというと、大体10万分の1ぐらいです。宇宙ができたばかりのときは、まさに「神が造りたもうた美しい世界」だったのですが、これが137億年も経った今では、図2の右のようにごちゃごちゃの世界になってしまったのです。非常に多相なものになりました。わたしたちが知っているのは図2の左の世界から右の世界に137億年かかって進化してきたということですが、一体どうやったら左から右へ来るかというと、唯一わたしたちが知っているメカニズムというのは実は重力です。
私たちの世界では、少しお金もうけに長けた人はますますお金をもうけてどんどん豊かになっていくし、お金もうけに長けていない人たちはどんどん貧乏になってなぜかどつぼにはまっていくということが起きます。何かちょっとしたきっかけ、ほんの少しの違いがあると、その結果がどんどん助長されていきます。宇宙でのむらむらから現在の多様な世界を造ろうと思うと、そこに介在できる力はお金ではなくて重力です。宇宙が出来たばかりの時に、物質の分布にほんの少し揺らぎがあって、その後重力だけで宇宙が進化してきたと思われているのですが、実はこれがまたとても不思議なことなのです。宇宙ができたばかりのときはものすごく一様だったのですが、非常に簡単に計算してみると、わたしたちの目に見えているようなものだけでこの非常に一様な世界からここまでむらむらの世界まで進化させようと思うと、宇宙の年齢では足りないのです。
非常に簡単に考えると、宇宙の年齢を待っている間だけではこんなふうに進化するはずがありません。とはいえ進化してしまったのです。だから何か我々の目に見えないものがここにあるのではないか。天文学者というのはけしからん種族でありまして、何か目に見えないものがあるとそれにいろいろな名前をつけるのです。目に見えないものに「ブラック」だとか「ダーク」だとか勝手にいろいろな名前をつけます。ちょうどこの場合も、ここの何か見えなかった背景にはダークマターと呼ばれるものが関与していて、それがもう少し揺らぎを助長したのではないかというふうに思われています。
しかし、やはり分からないことは分からないのです。それはある意味本当は分からないことを別の言葉に言い換えているだけなので、本当にこの世界からこの世界に移る過程で何が起きたかを直接に知りたい。それがわたしたちのASTRO-Fの目的の第1番目です。
もうちょっとだけコメントさせてください。今も申し上げましたけれども、このビッグバンでできあがった非常にシンプルな世界だった宇宙から現在の非常に複雑な宇宙まで137億年かかって進化してきたのですが、我々が知っているかなり遠いところ、例えばハワイにあるすばる望遠鏡で見ている遠いところに見える銀河というのは、わたしたちが知っている銀河とけっこうよく似た銀河なのですね。ところが本当にいちばん最初にどんな銀河が出てきたのか、これはなかなか分かりません。それを明らかにしたいというのがASTRO-Fの目標の一つになります。
宇宙ができたときは実は非常にきれいな世界でした。変なことを言って怒られるかもしれませんけれども、「神が造りたもうた世界」である宇宙には、水素とヘリウムしかなかったのです。でも今の世界の中には、窒素やら炭素やら酸素やら鉄やらいっぱいいろいろな元素でできていることを私たちは知っています。宇宙が最初できたときにはそんなものはありませんでした。image03そのあと、星が造られて、その星の中で核融合が進んだり、超新星爆発と呼ばれるような星が最後に大爆発を起こすような現象があって、宇宙のなかに様々な元素が作られたのです。そうやって出来た元素で我々はできているのです。新たな元素ができると同時にその元素が組み合わさっていろいろな複雑な分子も造られてきました。私たちを形作っているいろいろな有機物というものがこの宇宙の中で造られてきたはずです(図3)。そんなものが宇宙の中でどうやって造られてきたか、これも我々が答えたい質問の一つです。
人類は宇宙で一人ぽっちか?
赤外線天文衛星で明らかにしたい二つ目は、私たち人類が宇宙で独りぼっちかどうかということです。このことに関連して、実は最近いろいろ面白いことが分かってきています。私たちの太陽系に惑星があることはわたしたちは知っています。この地球がそうであり、金星がそうであり、木星がそうであり……。ところが、ずっと長い間、わたしたちの太陽系以外で惑星というものは見つかりませんでした。
しばらく前には「太陽系の外に惑星が」と言うと「何を言っているんだ?」と言われるのがおちでしたが、ちょうど10年くらい前にわたしたちの太陽系の外にも惑星がいるという間接的な証拠が見つかり始めました。まだ本当に惑星の姿そのものをとらえたとは言い難いのですが、面白いのは、これらが我々が知っていた惑星とは全然違うものであるということです。私たちがよく知っている惑星、例えば地球を例に取るとこれは1年で1回ぐるっと太陽の周りを回っており、わりとマイルドな気候を持っていますが、最近天文学が見つけた惑星というのは全然違っていて、ものすごく暑くて、太陽にあたる中心の星の周りをわずか数日でぐるっと回っているというような、まさに「異形の惑星」とでも言うべきものが見つかってきたのです。




