欧州宇宙機関(ESA)とJAXAの国際協力ミッションである水星探査計画BepiColombo(ベピコロンボ)において、ESA担当の水星表面探査機(Mercury Planetary Orbiter: MPO)とJAXA担当の水星磁気圏探査機「みお」(Mercury Magnetospheric Orbiter: MMO)2機の探査機が打ち上げに向けた最終状態へと結合されました。間もなくMPOおよび推進モジュール(Mercury Transfer Module: MTM)への燃料充填が開始され、いよいよ打ち上げに向けた最終準備へと向かいます。探査機を載せたアリアン5ロケットの打ち上げ予定時刻は日本時間2018年10月19日10:45(打ち上げ場のあるクールー現地時間2018年10月18日22:45)です。また打ち上げウインドウは2018年11月29日までです。

2018年8月30日に行われた審査の結果、ESA担当のMPOとMTMへの化学推進剤(ヒドラジンなど)の充填作業へ進んでもよいことが確認されました。
「この推進剤充填作業は、打ち上げ準備において、さらには水星への旅と水星の探査において、重要なマイルストーンです。いよいよ打ち上げ最終段階へ来たことを意味しているのです。9月5日から12日にかけて探査機に燃料が充填されると、もう後戻りはありません。全機結合ののち、最終電気試験を経て最終組み立て棟へ移動、そしてロケット打ち上げと続いていく予定です。」(ESA ベピコロンボプロジェクトマネージャ Urlich Reininghaus氏)

二つの探査機は、電気推進と化学推進による航行、さらに地球、金星、水星での度重なるスイングバイ(重力アシスト)によって、水星の重力に捕捉されるほど十分水星の近くまで運ばれます。その後MPOは自身のスラスタを使ってまず「みお」を所定の軌道まで連れていき、分離後にMPOはさらに高度を下げて水星近傍を周回します。

先週、「みお」とMPOの両探査機は今年初めて打ち上げ状態へと結合されました。(最後に結合が行われたのは打ち上げ場があるフランス領ギアナ・クールーのギアナ宇宙センターへ輸送される前、オランダのESA試験場での最終試験時でした。)
MTMは推進剤の充填が完了し次第、「みお」・MPO両機の下に結合されます。また「みお」を水星までの旅のあいだ、太陽光から守るMMOサンシールド(MOSIF) は打ち上げの直前に取り付けられる予定です。
「水星までの長い旅はまだ始まっていませんが、すでにこれまでの開発期間に「みお」とMPOのあいだには強い絆が育まれているように感じます。2機が力を合わせて共同科学観測を行い、必ずやミッションを成功に導いてくれることを信じてやみません。」(JAXA ベピコロンボプロジェクトサイエンティスト 村上豪)

「みお」の科学目標は水星周辺の宇宙環境、特に水星磁場が作るバリア(磁気圏)や水星がもつごく薄い大気に対して強大な太陽風が与える影響を詳細に調べ理解することです。
MPOはより水星本体に着目し、地表の地形や鉱物・化学組成などを調べますが、「みお」と協力して太陽風が水星の環境や表層にどのような影響をもたらしているかについても明らかにしようとしています。時々刻々と変化している環境でこうした影響を明らかにするためには、それぞれ異なる2地点から同時に観測を行う必要があり、ベピコロンボにしか達成できない科学目標といえます。
「ベピコロンボの2機の探査機がいよいよ結合されたのを見て、これから水星到着まで7年ものあいだずっとこの状態のままであることを考えると、とても感傷的になります。またこれは我々の水星へのミッションが間もなく始まることを意味しており、2機に搭載されているすべての観測装置が予定通り科学観測を始めるのを今から心待ちにしています。」(ESA ベピコロンボプロジェクトサイエンティスト Johannes Benkhoff氏)

「みお」とMPOが結合された様子

「みお」とMPOが結合された様子
ESA担当の水星表面探査機(MPO:下)とJAXA担当の水星磁気圏探査機「みお」(MMO:上、黒いカバーで覆われている)がギアナ宇宙センターにおいて打ち上げに向けた最終状態へと結合されました。
Credit: ESA-B.Guillaume

ベピコロンボ結合テストの様子

ベピコロンボ結合テストの様子
ESA担当の水星表面探査機(MPO:真ん中)とJAXA担当の水星磁気圏探査機「みお」(MMO:上)が電気推進モジュール(MTM:下)の上に仮組みされ、結合テストを行っている様子です。MPOと「みお」はすでに最終結合済みですが、MTMが最終的に結合されるのは探査機への推進剤充填の完了後になります。
Credits: ESA-B.Guillaume