.教 育 活 動

1.大 学 院
 国立学校設置法では,宇宙科学研究所のような大学共同利用機関は,大学の教員その他の者で当該大学共同利用機関の目的たる研究その他の事項と同一の事項に従事するものの利用に供するものとなっております.これに基づいて,本研究所においても特別共同利用研究員を受入れています.
 また,特別共同利用研究員とは別に,東京大学大学院の理学系研究科及び工学系研究科の学際講座において研究指導を行っています.このほか,若干の研究生や受託研究員も受け入れて,研究指導を行っています.

大学院学生の受入れ状況(平成10年度)
(特別共同利用研究員)	(東京大学学際講座学生)
	修士課程	博士課程	計	修士課程	博士課程	計
国 立	4名	7名	11名	理学系	24名	29名	53名
公 立	3名	1名	4名	工学系	35名	23名	58名
私 立	37名	10名	47名	計	59名	52名	111名
 計	44名	18名	62名

平成10年度宇宙科学研究所特別共同利用研究員募集要項

 1.受入人員
宇宙圏研究系	若干名
太陽系プラズマ研究系	若干名
惑星研究系	若干名
共通基礎研究系	若干名
システム研究系	若干名
宇宙輸送研究系	若干名
宇宙推進研究系	若干名
宇宙探査工学研究系	若干名
衛星応用工学研究系	若干名
宇宙科学企画情報解析センター	若干名
宇宙基地利用研究センター	若干名
次世代探査機研究センター	若干名

 2.受入対象
   大学院に在学し宇宙科学(宇宙理学及び宇宙工学)又はその関連分野を専攻する者

 3.研究指導題目等
   各研究系等の研究内容及び担当教官が指導することのできる主な研究題目を以下に掲げます.

 宇宙圏研究系
 人工衛星,気球,ロケット等の飛翔体を利用して,X線,ガンマ線,及び赤外線による宇宙観測を行う.これに基づいて,天体の構造や進化,放射機構について研究する.主な研究対象は中性子星,ブラックホール,活動銀河等の特異天体,恒星,銀河,銀河団,原始星,星間物質及び宇宙背景放射等である.地上の光学・赤外線望遠鏡や電波望遠鏡との共同研究も行われる.
 同時に,飛翔体に搭載される機器並びに測定技術の開発研究も進める.












 太陽系プラズマ研究系
 太陽,太陽系空間,及び,地球を含む惑星のプラズマ現象を中心に研究する宇宙科学の分野である.太陽系空間を占める太陽風プラズマ,太陽風プラズマと地球・惑星プラズマの相互作用の研究を,実験・観測的手法,及び,理論・モデリング的手法により研究を行っている.
 実験・観測的手法では,観測ロケット・人工衛星・人工惑星を含む飛翔体による直接観測を手段として上記の問題を解明する目的で研究を進めている.この分野の研究には,人工衛星等の飛翔体観測の計画・推進・運用,新しい観測技術の開発,室内実験による基礎過程の研究,大量の観測データの解析手法の開発等が含まれている.これらの手段に基づき,現象の物理的な特性を明らかにする事により研究を発展させている.現在進行中の研究は,極周回衛星「あけぼの」によるオーロラを中心とした極域現象の研究,磁気圏尾部観測衛星「GEOTAIL」による磁気圏尾部の研究がある.また,惑星電離圏と太陽風の相互作用を研究する目的の惑星探査衛星「PLANET-B」の開発,飛翔体観測を目的とした「中性粒子計測器」等の新しい観測技術の基礎開発等が行われている.
 理論・モデリング的手法では,上記の実験・観測的手法から得られた現象について,プラズマの加速機構,太陽風から惑星磁気圏・電離圏へのエネルギー・運動量の伝達機構,惑星磁気圏・電離圏内でのエネルギー変換過程等の問題を,計算機によるシミュレーションを含む理論解析・モデリングによって解明する事を目的として研究を進めている.

        研   究   題   目       	  担当教官
	鶴 田 浩一郎
宇宙プラズマ物理学	向 井 利 典
	早 川   基

 惑星研究系
 惑星研究系では地球・惑星及び原始天体の表面・内部構造やその形成・進化の過程並びに周辺の大気・プラズマに関する探査計画の遂行,新しい探査方法の開発などを行うとともに,関連した固体衝突現象,固体惑星物質物性,プラズマ物理,等の基礎的研究が進められている.
 研究の方法としては気球・ロケット・人工衛星による観測や室内実験および観測データの解析,新しいロケット観測機器の開発,理論的研究など多岐にわたる.又,将来の惑星探査計画に関する開発研究も行っている.


        研   究   題   目       	  担当教官
惑星の電離圏及び大気圏の構造と力学	小 山 孝一郎
地球・惑星大気及びプラズマの観測方法と基礎実験	中 村 良 治
生命の起源と進化に関する分子生物学	長谷川 典 巳
太陽系の起源・進化過程の研究	水 谷   仁
固体惑星の進化過程の研究	藤 村 彰 夫
小天体の起源と進化の研究	藤 原   顕

 共通基礎研究系
 この研究系の宇宙空間原子物理学部門では,近くは上層大気・電離層から遠くは星間空間に至る宇宙のさまざまな場所で起こる原子分子素過程の理論的研究を行っている.現在研究が進行しているテーマには,1)低エネルギーの原子・分子衝突(反応過程を含む),2)電子衝突による原子イオンの励起,3)電子あるいはイオンと分子の衝突(振動・回転励起),4)電離層・星間分子雲等への応用などがある.また,星形成過程の観測的研究も合わせて行っている.
 また,宇宙計測システム研究部門は,飛翔体を用いて宇宙及び太陽系や地球を観測するための観測及び計測手法を総合的に研究し,あるいは実用を目指して研究開発を行うことを目的としている.現在は,赤外線衛星ロケット・気球観測に備えた赤外線・サブミリ波の計測システム(検知器,分光器)の開発,また,宇宙電波干渉計の運用システムの研究も行っている.

        研   究   題   目       	  担当教官
原子衝突(光子,電子,分子,イオン等の衝突現象)の理論	市 川 行 和
星形成に関する観測的研究	北 村 良 実
多波長電磁波(X線,赤外線,電波)の計測技術の開発研究	芝 井   広
	紀 伊 恒 男

 システム研究系
 システム研究系では宇宙飛翔体に関連したシステム工学の研究を行っている.研究題目は別表に示すとおりであるが,主としてロケット,惑星探査機,大気球等の飛翔体及びその航行に関する研究を行っている.具体的にはそれらに関連する方式の立案,実験,観測システムの開発,計算機によるシミュレーション等を行っている.

        研   究   題   目       	  担当教官
宇宙輸送システムに関する研究	松 尾 弘 毅
推定・制御理論の宇宙システムへの応用	川 口 淳一郎
宇宙飛翔体の設計法	雛 田 元 紀
高速飛翔体のダイナミックスの研究	中 島   俊
惑星探査ミッションのシステム解析	石 井 信 明
宇宙航行の力学	桑 原 邦 郎
観測用大気球システム	矢 島 信 之
	山 上 隆 正
惑星間飛行計画	松 尾 弘 毅
	的 川 泰 宣
惑星間探査機の設計法	上 杉 邦 憲
宇宙機の熱設計法	小 林 康 徳
宇宙環境利用・宇宙生物科学の研究	山 下 雅 道
宇宙機のダイナミックスに関する研究	森 田 泰 弘

 宇宙輸送研究系
 宇宙輸送研究系では,大気圏から深宇宙に及ぶ広い範囲における科学探査,工学実験を支える飛翔体とその輸送に関する分野の研究を行っている.飛翔体構造工学,気体力学,高速流体力学,高強度材料工学の4部門があり,現在それぞれロケットの構造動力学,人工衛星及びロケットの構造設計・解析とその機械環境試験,宇宙航行に関する流体力学,空気力学,ロケット用構造材料の強度と加工性及び微小重力下の材料プロセシングの研究を進めている.

        研   究   題   目       	  担当教官
宇宙航行の気体力学	安 部 隆 士
飛翔体の高速空気力学	藤 井 孝 藏
宇宙飛翔体の構造及び構造動力学	小野田 淳次郎
宇宙材料科学	栗 林 一 彦
宇宙飛翔体用構造・耐熱材料	佐 藤 英 一
宇宙飛翔体の機械環境	峯 杉 賢 治

 宇宙推進研究系
 宇宙飛翔体を推進させる固体ロケット,液体ロケット空気取込式,エンジン及び電気推進ロケット等の基礎開発を主研究課題とする.これらの推進器の開発に必要な研究を機械工学,化学反応,電磁流体力学,伝熱学等の立場から進める.そのほか推進用燃料,推進器構成用耐熱材料の研究を行う.

       研   究   題   目	  担当教官
液体ロケット及び空気吸込式推進に関する研究	棚 次 亘 弘
宇宙推進工学の研究	高 野 雅 弘
電気推進の研究	栗 木 恭 一
耐熱複合材料に関する研究	八 田 博 志
プラズマを用いた宇宙工学	都 木 恭一郎
将来型宇宙輸送システムに関する研究	稲 谷 芳 文
固体推進薬に関する研究	齋 藤 猛 男

 宇宙探査工学研究系
 宇宙探査工学研究系は電子通信,情報制御工学と機械工学の中で主として宇宙探査機に関連のある分野における基礎並びに応用研究を行っており,宇宙構造物,電子計装,宇宙機制御,電波追跡及び宇宙自動機構の部門から成っている.
 最近の研究活動は以下のようである.宇宙構造物については,新しい構造概念の創造と構造解析の研究を中心として,伸展構造や展開型アンテナ等の展開構造物の研究開発,それらの宇宙実験の検討,さらにインテリジェンスを備えた適応構造物の研究を進めている.ロケットの飛行や探査機の運用に必要な航法や誘導制御のための方式に関する研究を進めると同時に,宇宙機の姿勢検出,指向制御,光学航法,精密測距などに用いるセンサやアクチュエータなどの機器とそのデータ処理に関する研究も行われている.さらに,宇宙におけるロボティクス・インテリジェントシステム・惑星上を走る自律ローバーの研究も行われている.電波追跡に関して通信システムやレーダの研究と共に,テレメトリ・コマンド方式,搭載用と地上局用アンテナについても,研究が進められている.宇宙通信・レーダーやエネルギー伝送にかかわる基礎技術の一つとして,相対論的電子ビームを用いた自由電子レーザーの研究も行われている.また,高性能な超小型衛星のハードウェアやシステム,宇宙における放射線や高温等に対する耐環境性を備えた真空マイクロエレクトロニクスの研究を行っている.

        研   究   題   目       	  担当教官
宇宙構造物の構造概念と制御	名 取 通 弘
宇宙用構造物の機構と力学	樋 口   健
宇宙通信及び電波応用	高 野   忠
情報理論とその宇宙応用	山 田 隆 弘
宇宙探査機用姿勢センサ及びアクチュエータ	二 宮 敬 虔
宇宙探査機の姿勢制御および光学航法
宇宙探査機の航法・誘導・制御	橋 本 樹 明
宇宙における画像処理応用
宇宙における制御,宇宙ロボティクス	中 谷 一 郎
飛翔体画像通信工学	横 山 幸 嗣

 衛星応用工学研究系
 衛星応用工学研究系は,宇宙電子部品,宇宙エネルギー工学,リモートセンシング工学及び遠距離通信の四つの部門から成り,半導体デバイス,宇宙電波工学,軌道決定,電波天文,VLBI等にかかわる研究,並びにスペースプラットホームSFU,宇宙動力システム,太陽発電衛星関連の研究等将来の宇宙システムの開発にかかわる研究を行っている.

        研   究   題   目       	  担当教官
宇宙動力システム	長 友 信 人
マイクロ波リモートセンシング・宇宙電波工学	廣 澤 春 任
電波天文学(スペースVLBI等)・宇宙電波科学	平 林   久
半導体結晶評価の研究	田 島 道 夫
宇宙エネルギー実験	佐々木   進
惑星探査機を用いた電波科学に関する研究	山 本 善 一
推定・制御理論の航法への応用	加 藤 隆 二
高温エレクトロニクスの研究	廣 瀬 和 之

 宇宙科学企画情報解析センター
 宇宙科学企画情報解析センターでは,情報処理,計算機,ネットワーク,および天体物理,宇宙プラズマのシミュレーション等を研究対象としている.具体的には,高速ネットワークにおけるコンピュータネットワーク方式,分散処理技術,大容量のデータベース等,大量の衛星観測データを高速に処理,伝送,蓄積するための基盤技術の研究を進めている.また,天体プラズマ現象を数値シミュレーションおよび衛星のデータ解析を通して理論的に理解することを目標にした研究,磁気リコネクションによるエネルギー開放過程,衝撃波による粒子加速,プラズマ乱流などの研究を行っている.
 またX線天体を用いた宇宙空間物理学,さらにエキスパートソフトウェアを利用した人工衛星の診断システムの開発研究も行っている.


        研   究   題   目       	  担当教官
宇宙空間物理	長 瀬 文 昭
宇宙機の監視システム	橋 本 正 之
宇宙プラズマ物理	星 野 真 弘

 宇宙基地利用研究センター
 宇宙基地利用研究センターは,宇宙基地,観測ロケットなどによる宇宙利用研究の推進を目的としており,宇宙環境要素が材料プロセスや生命現象に与える影響について研究を行っている.宇宙生物科学の分野では動物の行動や発生と重力とのかかわりを中心として,また材料科学の分野では様々な重力環境下での材料プロセシングの研究を進めている.

        研   究   題   目       	  担当教官
微小重力下での材料プロセシング	稲 富 裕 光
宇宙生物化学の研究	黒 谷 明 美

 次世代探査機研究センター
 今までに経験のない月・惑星の探査や,飛躍的に高精度な天文観測などに必要な新しい探査機技術の先行的な研究を行うことが,本センターの目的である.宇宙で要求される軽量化を図りながら,新しい機能を実現し,しかも,月・惑星等の特殊な環境下で高い信頼性を確保するためには,今までの延長線上にない創造的な技術の研究が,重要である.
 本センターは,このような背景のもとに宇宙研内の研究系はもちろん,外の大学・研究機関・産業界等と協調し,巾広く,新しい難度の高い技術の研究開発を進めていく.常に「次」の世代の科学観測ミッションを見据えて,独創性に富む新技術にチャレンジする―それが,当センターの使命である.

        研   究   題   目       	  担当教官
宇宙機の熱設計法	小 林 康 徳
相対論的電子ビームを用いた自由電子レーザ
真空マイクロエレクトロニクス	斎 藤 宏 文
高機能小型衛星の研究	
惑星表面,内部の探査に必須のリモートセンシング,その場	加 藤   學
観測のための高機能センサーの開発,及びデータ解析研究
天体からの赤外線の探査機を用いた観測的研究	中 川 貴 雄

2.受託研究員
 大学卒業または同程度以上の学力をもつ者に対し,文部省受託研究員制度実施要項に基づき,民間会社等に勤務する技術者と一層の技術向上を図ることを目的として実施されているもので,平成10年度に受入れ指導を行ったのは次のとおりである.
   受託研究員     3名
   受入会社名
     三菱重工業,日本分光,日本宇宙フォーラム