超小型衛星は、最近ようやく、深宇宙に進出し始め、宇宙研の科学探査ミッションを担えそうなところまで来ています。「超小型衛星」は、文字通り非常に小さい人工衛星のことです。小さく高性能で、世の中でよく使われている最先端の技術、つまり従来は宇宙用とは見なされなかった技術を工夫して導入することで可能になった衛星です。

JAXA 宇宙科学研究所 教授 船瀬 龍

宇宙用ではない技術を導入するときに、例えば、信頼性や寿命について「割り切る」ことで、従来よりも圧倒的に小さくて軽くて安い人工衛星ができる、という勝負をしてきたのが超小型衛星かなと思っています。割り切った部分は弱点でもあります。が、圧倒的に低コストなので、開発→打上げ→運用→教訓を得る→次のミッション、というサイクルを早く回して技術革新のスピードアップを図ったり、人材を育成したりすることに重点を置き、結果的に大きな成果をあげることを狙ってきました。世界初の超小型衛星が打ち上がったのは2003年ですが、2013年頃からその数は爆発的に増えています。

JAXA 宇宙科学研究所 教授 船瀬 龍

では今後超小型衛星は探査の世界でどのように使えるようになるでしょうか? 三つの方向性を考えています。

一番目は、「より高度に・より自在に」という方向性です。中型や大型の探査機か輸送船と超小型衛星を組み合わせれば、ある種の危険を伴う探査機能を超小型衛星に任せてリスク分散するという使い方が考えられます。このときの超小型衛星は、活動環境や稼働時間を限定できるので、最適化すれば極限まで小型軽量化できます。

二番目は、「より高頻度に」という方向性です。例えば月ゲートウェイによって人間の拠点が月周辺まで行けば、そこから探査機をたくさん太陽系内に配備することができるという世界も実現すると思います。

三番目は、「めちゃくちゃ遠くへ」という意味で「より遠くへ」という方向性です。より小さく軽くなれば、より遠くへ行けます。そこで超小型衛星でしかできない、あるいは超小型衛星でこそ狙える探査というのが考えられると思っています。ただ、遠くに行くには必然的に時間がかかりますから、寿命や信頼性の課題が出てきます。超小型衛星の良さを損なわずに、これらの課題を解決する必要がありますが、私は解はあると考えています。