イカロス君

Twitterの裏話ならイカロス君本人に聞いてくれ、と思ったのですが、今は冬眠中で寝てるのか起きてるのかも分からないので、私が分かる範囲で代弁してみます。

イカロス君のつぶやきは、打上げが迫った2010年の1月末くらいから始まりました。最初はイカロス応援キャンペーンの告知くらいで静かなものでした。フォロワーがほとんどいなかったので、種子島宇宙センターでの射場作業が始まったくらいから、「ちょっとは自分の様子を報告しろよ」ってことで、報告を始めさせました。

それでも、まだまだ知名度は上がらず......。射場で試験しながら「んー、どーしよっかねぇ?」とチーム内で悩んでいて、「じゃあ、ちょっと、『はやぶさ』とか『あかつき』のTwitterに絡んでみろよ」と、半分漫才みたいなことをさせ始めました。これが功を奏したらしく、みるみるフォロワーが増え、調子に乗ったイカロス君はしゃべるしゃべる。浮かれ過ぎて心配になるくらいでした。

2010年5月18日、打上げ予定日でしたが、打上げ数分前に延期決定......。発した「あ...」という言葉には「何言ってんだコイツ」と思ったものですが、我々チームの何とも言えない感情を代弁してくれていたのでしょう。3日後の5月21日、何を思ったのか、打上げ直前に素顔を公開してしまいました(図)。その後はご存じの(?)通り、元気に「いってきまーす」と地球から出発し、すべての実証実験を成功させました。日々、Twitterで深宇宙での状況を伝えながら、表情を変えるなんてこともやりだしました。チーム内でも「ちょっとコイツ調子に乗り過ぎてないか?」と心配したものですが、心配をよそに大反響を呼び、フォロワー数だけで見たら主衛星の「あかつき」をブッチギリにして知名度が上がっていきました。

IKAROSのミッションは大成功でしたが、もちろんすべてが順調だったわけではありません。実際に運用している裏では大変なことも多々あったのですが、それでもチーム一丸となって楽しく運用できたのはイカロス君のおかげだと思っています(もちろんDCAM1ちゃん、DCAM2君も)。森さんはじめ、チーム内にはムチャなことばっか言う人が多いのですが、それに見事に応えてくれたイカロス君にありがとうと言いたいですね。そのうちまた、冬眠から目覚めて「おはよう」と涼しい顔であいさつしてくれることを期待しています。

(さわだ・ひろたか)