20190129_1.jpg

今回発見された小天体の想像図。半径約1.3キロメートルで、惑星の材料が生き残ったものと考えられる。Credit: Ko Arimatsu

太陽系内にある小サイズの天体(小惑星など)が、背景の恒星を隠す現象を市販の小型望遠鏡で捉えることに、京都大学・国立天文台・JAXA宇宙科学研究所などからなる研究チームが成功しました。研究チームは、この天体が海王星よりも外側に分布しているエッジワース・カイパーベルト天体であると推測しています。今回の研究手法により、直接撮影することが難しい小天体を多数発見できれば、いまだに謎の多い太陽系の誕生時の姿を知るための大きな手掛かりとなると期待されます。

太陽系で最も太陽から遠い惑星である海王星の外側には、小天体が分布する領域があることが知られています。エッジワース・カイパーベルト(もしくは、単にカイパーベルト)と呼ばれるこの領域に分布している天体は、地球などの惑星を作る材料になった小天体が、惑星への成長過程からとり残された結果、現在も存在していると予測されてきました。カイパーベルト天体は直径2500キロメートルほどもある天体も知られていますが、より小さな天体ほど数が多いことがわかっています。また、探査機Voyager1と2の観測からは、マイクロメートルサイズのダストと呼ばれる天体も検出されています。しかし、その中間である彗星核と同程度のキロメートルサイズの天体は数例しか報告されていませんでした。このような小天体は太陽光を反射してしか光りません。そのため、あまりに暗く、すばる望遠鏡などの大型望遠鏡を使っても直接観測することはできないためです。

京都大学所属の有松亘(ありまつ こう)研究員を中心とする研究グループは、背景にある恒星の光を手前の小天体が遮ることにより、恒星が一時的に暗くなるという現象をつかって、カイパーベルト天体を発見しようという観測を実施しました。

市販の口径28センチメートルの望遠鏡に高速ビデオカメラを装着し、多数の恒星を記録するのです。研究グループは、沖縄県宮古島市に設置した2台のシステムで同じ領域を同時に観測し、2000個の恒星を60時間にわたってモニターしました。その結果、ある一つの恒星が0.2秒間だけ暗くなったところが捉えられました。理論計算と比較したところ、この現象は、カイパーベルトにある(具体的には地球から約50億キロメートル離れたところにある)半径およそ1.3キロメートルの極めて小さな天体が、恒星の前を通りその光を遮ったことで起きたと考えると、観測を再現できることがわかりました。この方法では、より地球の近くにある、より小さな天体も同様の現象を引き起こす可能性があります。ですが、カイパーベルトより地球近くにあり、観測結果を再現する天体の密度はカイパーベルト天体よりもずっと低いため、研究チームでは、観測された現象はカイパーベルトにある小天体であると考えています。

今後も同じような観測を続けることで、多くの観測例を集めることで、惑星の材料となった小天体の分布が明らかにできると期待されます。

この研究成果は、K. Arimatsu et al. 'A kilometre-sized Kuiper belt object discovered by stellar occultation using amateur telescopes' として、2019年1月28日発行の英国の科学雑誌『Nature Astronomy』オンライン版に掲載されました。