当機構 宇宙科学研究所に所属する研究者が主著者となって投稿し、平成18年6月2日のサイエンス誌に掲載された論文「X-ray Fluorescence Spectrometry of Asteroid Itokawa by Hayabusa」について、本日、主著者らがサイエンス誌編集部に論文の撤回を申し入れましたのでお知らせいたします。なお、当該論文は、「はやぶさ」に関連して発表された査読付き論文129件(うちサイエンス誌には14件掲載)の内の1件です。

当該論文は、小惑星探査機「はやぶさ」(平成15年5月打上げ、平成22年6月帰還)の観測対象であるイトカワ周辺で搭載観測装置の1つである蛍光X線分光器(XRS)により取得したデータについて解析し、イトカワの元素組成は地球に多く飛来する隕石(普通コンドライト型隕石)と同じ組成であると推定したものです。

本件は、同タイプの観測機器の不具合を受けて観測データの再評価を行う中で、論文中の蛍光X線データの解析方法に誤りがあることが判明し、論文の主たる結論を主張出来ないことが主著者らの間で確認されたことから、主著者らがサイエンス誌編集部に対して論文の撤回を申し入れることとしたものです。

宇宙科学研究所では、当該論文について研究評価委員会において研究内容の評価を行い、当該解析方法による論文内容の主張は妥当ではないと判断しました。なお、誤った方法による結論の導出について故意ではなかったと認定しており、研究不正にあたらないと判断しています。

本件を受け、当機構では所属する研究者に対して、科学研究によって生み出される知の正確さや正当性を科学的に示す最善の努力を払うよう、注意喚起を行います。

当該論文発表の約4年後、「はやぶさ」はイトカワからサンプルを持ち帰り、分析の結果、普通コンドライト型隕石であることなどが判明しました。今回の論文の撤回は、サンプル分析により解明されたそれらの事実に影響を及ぼすものではありません。

はやぶさXRSに係る論文撤回の申し入れに関する記者説明会資料