運用終了工学実験衛星「ひてん」

「ひてん」は月探査技術の実証のために開発された工学実験衛星である。地球大気によるエアロブレーキ実験や月スイングバイや月周回軌道への衛星投入、地球・月空間の宇宙塵の計測など、月探査に関わる様々なミッションを成功させた。

太陽観測衛星「ようこう」 磁気圏観測衛星「あけぼの」

「ひてん」は、月探査技術の実証のために開発された工学実験衛星です。月周回軌道への衛星投入や、10回に及ぶ月スイングバイ実験、高度120kmの地球大気によるエアロブレーキ実験に成功し、1993年4月11日に月のフレネリウス・クレーターに落下しました。

機体データ

名称(打上げ前) ひてん(MUSES-A)
国際標識番号 1990-007A
開発の目的と役割 ・軌道の精密標定・制御・高効率データ伝送技術の習得
・月スイングバイ実験
・地球によるエアロブレーキ実験
・月周回軌道への衛星投入
・地球・月空間の宇宙塵の計測(ミュンヘン工科大学との共同研究)
打上げ日時 1990年1月24日 20時46分
場所 鹿児島宇宙空間観測所(内之浦)
ロケット M-3SIIロケット5号機
質量 197kg(月周回孫衛星含む)
形状 直径1.4m、高さ79cmの円筒型
上面に重量約11kg、対面寸法40cm26面体の月周回孫衛星(はごろも)を搭載
軌道高度 近地点262km 遠地点28600km
軌道傾斜角 31度
軌道種類 略円軌道
軌道周期 6.7日
主要ミッション機器 ダストカウンター(MDC)
光学航行装置(スピン安定型衛星としては世界初)
運用停止日 1993年4月11日
落下日 1993年4月11日(月面)
運用 発射後34分に衛星の回転を毎分約25回に落とし、続いて、衛星のスピン軸を太陽方向と垂直にし、衛星を長楕円軌道に投入する作業を終了した。10回におよぶ月スイングバイ実験と高度120kmの地球大気によるエアロブレーキ実験に成功し、最大135万kmの遠地点高度を記録した。また、1990年3月19日5時4分9秒に月から約1万6500kmの距離に接近した。その接近前に分離された孫衛星は月周回軌道に投入され、「はごろも」と命名された。1992年2月には「ひてん」も月周回軌道に投入された。1993年にミッション終了、1993年4月11日に月のフレネリウス・クレーターに落下した。