法学部出身も、得意科目は物理・化学

これまで15年間、NASDA、JAXAの様々な部署で、多種多様な事務・管理業務を担当されてきました。大学は法学部で刑事法を専攻されたと言うことですが、なぜ宇宙開発という仕事を選んだのですか?

もともと理系が好きで、子供の頃は科学分野の雑誌や書籍を良く読んでいました。物理・化学や数学が得意科目だったので、大学進学時には理工学部か法学部かで迷いましたが、社会の仕組みを学びたいと考えて法学部に進学し、刑事法ゼミに入って研究をしていました。ゼミ仲間との勉強と討論は大変充実したものでしたが、自分の好きなことから少し遠ざかってしまったかなという印象はありました。就職活動の時期に入り、たまたま就職情報誌で宇宙開発事業団(当時)が目に留まり、ここなら自分に向いていると直感したことを覚えています。

今の所属「プロジェクト調達室」での仕事は?

契約部配属になって4年間、これまでは広報や宇宙教育、施設設備工事や労働者派遣など一般管理部門の契約を担当してきました。このISASニュースの制作支援も昨年度までは私の担当契約です。今年4月からは、新設された「プロジェクト調達室(発足当初は課)」に移籍し、準備段階のものを含む機構プロジェクトに関する契約の担当として、ASTRO-H(「ひとみ」)代替機、「はやぶさ2」、水星磁気圏探査機(MMO)などに関する契約業務に従事しています。

宇宙開発事業は全てがJAXA内で行えるわけではありません。ロケットや衛星の開発における設計や試験、製作はもちろん、打上げ後の衛星運用支援や設備改修などにおいてもその都度企業との契約を交わします。契約をするには、何を調達するのかを明確にし、契約相手方を適正に選定し、より経済的な契約金額と適切な契約条件を整える必要があります。これは私たちが普段何かモノやサービスを購入する時と基本は同じですが、研究開発段階が含まれ、事業規模も金額も大きいプロジェクトの調達となると、最初の「何を調達するのか」の定義から難しく、入念に整理調整することが必要となります。開発現場で何が行われているのか知識を深めるのは当然として、開発スケジュールや企業側の体制、考え方にも熟知しなければなりません。日々研究担当部門と密に連携を取りながら進めています。

「契約部」から「調達部」へ

7月に組織名称が「契約部」から「調達部」に変更されました。何が変わったのですか?

JAXAは昨年のX線天文衛星「ひとみ」の運用断念を契機に全社的にプロジェクト業務の改革に取り組んでいます。契約部門は従来、主要地区ごとにその地区担当の契約課を設置していたのですが、調達内容ごとに担当課を分け、その課のメンバーを各地区に配置する方式に変えて、同類型の調達に対する専門性と統一性の強化を図っています。また、新設のプロジェクト調達室はプロジェクト実行前の立上げ段階からの検討活動に加わり、プロジェクト全体を構成する調達方針やJAXAと企業との役割分担等の立案支援に参画しています。契約手続のみに対応する受身的なスタイルではなく、調達を通じて能動的、戦略的にJAXA事業の目標達成に参画する体制に変わったことが「調達部」への名称変更に込められています。

宇宙研に来られた時の感想やこれまでで印象に残る仕事は?

相模原「キャンパス」と呼ぶように学術研究・教育の拠点ですので大学院学生や外国人研究者が在籍していることと、同じ建物内に教授や准教授などの研究室が並んでいます。東京事務所や筑波宇宙センターに長くいた者にとっては新鮮な驚きでした。業務外の集まりもあり、私は大学時代に合唱サークルに入っていた縁で、ISAS合唱部に所属して週1回練習に参加しています。

これまでの業務では2年目の新人でいきなり担当した宇宙3機関統合の経験が印象に残っています。JAXA設立登記を航空宇宙技術研究所の先輩職員と2名で担当したのですが、設立当日に法務局に登記申請書を不備無く持ち込む必要があることが分かり、周りからは重大任務だぞと脅かされました。JAXAにおいて事務職の役割は非常に大きいものがあります。機構プロジェクト契約担当の仕事を通じて、それをさらに認知・実証していきたいと考えています。

【 ISASニュース 2017年8月号(No.437) 掲載】