No.217
1999.4

ISASニュース 1999.4 No.217 


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 システム工学





 日本の宇宙科学の担い手として「工学と理学のスクラム」という無敵のパワーを育てた糸川は,衛星打上げの努力の途上で東京大学を去った。その後組織工学を柱とするシステム工学の普遍化のために大きな努力を惜しまなかった。

 「システム工学は焼き鳥の串である」という糸川の至言がある。焼き鳥はネギやらタンやらハツやらが一本の串に支えられて大変食べやすいように串指しにされている。串そのものは食べられないが,多くのおいしい物を一本の焼き鳥にまとめて,食べやすいようにする。人間の事業も,ヒトと時間とカネとが複雑に絡み合って成り立つわけだが,これを上手にアレンジして見事な戦略・戦術・スケジュールに仕上げて管理していくのが,システム工学の真髄である。糸川は,こうしたヒラメキのある類比で仕事の本質を表現することがよくあった。

 数あるシステムの中で晩年の糸川英夫が最も関心を持ったのは,宇宙・地球という巨大システムとその中で日本が大きな役割を果たすためのシステムだったと言える。その主張には傾聴すべきことが多い。曰く,
「技術は金になるが科学は金にならない。自然の法則を理解することは現実の役に立たないと,多くの日本人が考えている。ここから抜け出さないかぎり,日本に科学が根づくことはありえない。」
「歴史は,旧リーダーへの批判から早く変革に手をつけるリーダーの選択に向かわなければならない。」




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