第8章 究極の固体ロケットをめざして

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大型の地上燃焼試験

計画が正式に起動した後のM-V推進系の尻上がりの開発ペースは、NTCにおける各段試作モータの燃焼試験の実施経過から一目瞭然である。1号機用キックモータを含む4種類の新開発モータについて、各縮尺シミュレーション・モータ1基および実寸大試作モータ2基を基本方針として、合計8回・10基の試作モータの大気もしくは真空燃焼試験が実施されたが、開始当初のスケジュールが間延びしているのは、1・2段モータのケース素材の研究開発に手間取ったためで、これが尻上がりの開発ペースと計画完了が予定より遅れて95年までずれ込むことになった主な理由である。

M-V第1段モータM-14燃焼試験

M-V第1段モータM-14燃焼試験

【第1段モータ】

1段モータの燃焼試験は、M-V計画の一環として新営された大気燃焼試験棟で行われたが、その設計・施工に関しては、建設立地条件が岩盤に届くパイルを打ち込めない日本海に面した海浜であり「砂上の楼閣」となりかねないことと噴煙によって隣接海面を汚濁しかねないことに特に配慮する必要があった。海水汚染防止のためにモータのノズル後端から僅か28mの位置に設置しなければならなかった耐火コンクリート製の火炎偏向盤については、予め、スーパーコンピュータを用いた最先端の数値流体力学を駆使して、70tを越える大量・優勢なノズル噴流を45°上空に偏向させて大気中に拡散させるための最適形状設計を実施した。

1994年6月に行われた同試作1号機モータ大気燃焼試験の終了直後、一部黒こげになりながらもモータ推力450tによく耐えて寸分の狂いもなく立ち続けている試験棟建屋の姿と海面を殆ど汚濁することなく火山の噴火を見るように500mを越える中天まで立ち昇る噴煙を見て、一同安堵しかつ「してやったり」と悦にいったものである。後日、この時行われた周辺地区の土中振動計測結果から、NTC付近の白砂の堆積層は地下約50mにも達していることが明らかになった。

【上段モータ】

2段から上の上段モータの燃焼試験は、全て、既設の真空燃焼試験棟で行われた。この設備は、内容積450m3、総重量75tの天蓋部が自走装置によって退避可能な独創的な構造を持つ大型真空槽を基幹としており、M-3SII計画の一環として81年に設置されたものである。M-3SIIの2段モータとM-Vの3段モータがほぼ同規模であることを考えれば、設置当時、同設備が当面の用途に照らして如何に大規模かつ先駆的なものであったか理解できよう。これも、やがて来るべきABSOLUTE計画具体化の時に備えるための先取り的配慮によるもので、決して当時影も形もなかったM-V計画を直接想定したものではなかった。

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