第8章 究極の固体ロケットをめざして

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制御系の開発経緯

よく言われることだが、宇宙開発で最も難しいのは、試行錯誤の過程がほとんどないということである。新しいロケットを作る場合でも、事前に知りうることはほとんどが数学モデルでしかない。その数学モデルがどのくらい正しそうなのか、あるいはどのくらいの不確定性を含んでいるのかを見極めることが、この制御系レビューの主題だったわけである。全ての段が新しいロケットを打ち上げることは世界的にも少ないと思うが、どのくらい検討すると、どのくらいの完成度になるのかという感触は今回よく把めたと思う。宇宙研は、M-3SIIの8号機で苦い思いをするまで、実に順調に打上げに成功してきたが、全て新しいロケットを作り上げようとしてきたのは、本当は無理をしていまいかと、あの不具合の後はずいぶん考えさせられた。この問題に答えが出せたのは、1号機の飛翔後であった。

どの段のアクチュエータも新しいものばかりだったから、制御系の検討はその数学モデルの構築と試験結果の整合性をとる作業がほとんど全てであったと思う。この短期間に少ない回数の試験で、よくモデルを追い込めたものだと思う。ファイバジャイロは可動部分がないため機械環境に強いといわれるが、実際の開発は皮肉にも全く振動対策そのものだった。その対応に追われ、残念ながら半年間打上げは延期されてしまったが、この半年の間に講じられたいくつかの対応によって、ようやくINGも一人前になったといえる。

M-Vアクチュエータのチェック

M-Vアクチュエータのチェック

レビューの内容は、この他にも軌道計画から構造荷重解析まで、非常に広い範囲のテーマを扱った。そういった分類しがたい分野の検討の集合が制御系レビューの実態であった。キーメンバーは最後まで減らなかったが、これも各担当者の強い決意の現れだった。

発射のまさにその朝まで最後のアクションの消化に追われたが、これもまさに粘りの現れ。発射の直前、この強い横風でも大丈夫だろうかと問い合わせがあったが、コントローラがスタートせんとしていた段階でもなお計算をしていた人もいたくらいだから、粘りもここに極まれりといったところであろうか。発射後のテレメータデータは、それまでレビューで見なれていた何かしら問題のある場合とはうって変わって、拍子抜けのするくらい順調なものだった。こういうものなのだというのが実感であった。

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