第5章 M-3SIIロケットとハレー彗星探査

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4つの難関

しかしそれにしても、これまでの地球まわりの衛星と違って、いろいろと難しい問題が多い。中でも大きな難関が4つあった。

第一は、探査機を地球重力圏の外へ脱出させ、ハレー彗星のそばまで運ぶことのできる強力なロケット。これまでのM-3S型では、重力を脱出させるだけでも 50kgがせいぜいである。こんなものでは何にも科学機器は乗せられない。少なくとも今のM-3S型の2倍半くらいの力を持ち、目標とする太陽中心軌道へ探査機を正確に送り出すことのできる制御能力のあるロケットを開発したい。

第二は、もちろん探査機自身である。地球まわりの衛星とは全く異なる惑星間空間という環境で働く探査機は、おのずと勝手の違うことが多い。温度環境、磁場環境、地球局との通信距離、太陽からの距離、……設計には全く新しい考え方が必要となる。初の惑星間探査機の設計・製作は大問題である。

軌道計画によれば、探査機がハレー彗星と出会う時、その場所と地球とは1億7,000万kmも離れている。それでも探査機から観測データを受け取らなければならないし、また地球局からも探査機に向けて「あっちへ向け、こっちへ向け、スピードを上げろ」などという軌道制御の指令を出さねばならない。つまり双方向の交信が必要なのである。そんなに離れていると電波はうんと弱くなってしまう。だから、探査機の通信パワーもさることながら、地上にも探査機から来た微弱な電波をいっぱい集められるような巨大なアンテナを建造する必要がある。これが第三の難関。

全く未経験の分野として、惑星間軌道を飛ぶ探査機の軌道決定という厄介な課題があった。いくら交信電波が光と同じ速さだとは言っても、1億7,000万 kmも離れていると、こちらから今メッセージを送っても、向こうに届くのに10分近くかかってしまうのである。ということは、電波を送る方向は今いる位置ではなくて、10分後の位置になるので、探査機の軌道を非常に正確に決定しておかなければ、探査機とお話すらできないことになってしまう。未知の領域ではあるが、この軌道決定用の膨大なソフトウェアを開発しなければならないことは明白である。これが第四。

さあ、やることが山ほどあるぞ。宇宙科学研究所の全力をあげての奮闘がつづいた。

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