星空のスーパースター登場
探査機を接近させるためには、彗星の軌道がある程度よく分かっていなければならないが、その点ハレーはこれまでに何度も地球に接近し、歴史的によく観測され、軌道情報もしっかりしている。
科学的価値が高い上に計画を立てるための情報が豊富であり、その上だれでも知っている親しみ深い星、ハレー彗星。しかもまだ世界には彗星探査ミッションはない。しっかりした計画を立てれば、政府から認可される見込みがあるのではないか。軌道グループは猛烈な計算を開始した。
地球の公転軌道面(黄道面)とハレー彗星の軌道面は約18度傾いているので、ハレーが黄道面をよぎる時に探査機が出会うように軌道を設計するのが、打上げエネルギーの見地からは都合がよい。計算の結果、出会いは1986年3月、ハレーが黄道面を上から下(北から南)へ潜り込む降交点近傍と定められた。そこは地球軌道の内側に切れ込んだ金星軌道に近い辺りである。打上げ時期としては、1984年末から1985年初めにかけての時期と1985年の夏が、最適と考えられた。