Nancy Grace Roman宇宙望遠鏡向けK帯受信システムの整備
Nancy Grace Roman宇宙望遠鏡への貢献(概要) |
JAXAでは、NASAが2026年度に打上げ予定のNancy Grace Roman宇宙望遠鏡(以下「Roman」という)を支援するためのシステムを整備中です。
本システムはNancy Grace Roman宇宙望遠鏡(以下「ROMAN」という)からダウンリンクされる26GHz帯の信号(画像データ)を受信・復号し、NASAのゴダード宇宙飛行センターに伝送するシステムとなります。
美笹局ではこれまで大容量かつ高速のデータ受信をしたことがありませんが、今回のROMAN支援をよい機会として美笹局における支援の幅を拡大していく予定です。
ROMANの詳しい情報はホームページがありますので以下をご覧ください。
・NASAのサイト
・JAXA宇宙科学研究所のサイト
K帯受信システムの整備状況 |
美笹局には既にKa帯(32GHz帯)受信システムが存在するため、これと区別するため、ROMAN用は「K帯受信システム」と呼称しています。
K帯受信システムは、ROMANからの微弱な信号を増幅するKLNA(K帯低雑音受信増幅装置)、信号をコンピュータが取り扱える情報に変換するKRX(K帯受信サブシステム)、地上間で伝送しやすいファイル形式に変換するFTF(フレーム・トゥ・ファイル変換装置)、運用前に装置の健全性等を確認するWBR(記録装置)、ファイルをNASAに高速伝送するKNW(ネットワーク設備)及びこれら全ての制御監視を集中的に行うDSCS(局運用管制装置)から構成されます。
以下では、それぞれの整備状況を掲載します。
| まず、ROMAN向けのシステムを構築するにあたり、K帯受信システムのKLNA他を既存の「はやぶさ2」や「みお」で使用する
X帯/Ka帯のLNAと反対側に設置するため、美笹局の第二期整備で第五鏡(電波の方向を変える鏡)の遠隔制御を実現しました。これにより、これまで手動で15分程度かけて回転させていたものを5分以内にモータで回転することが可能となったため、探査機の切り替えを短時間に行うことが可能となりました。動画は第五鏡が回転する様子です。100倍速で再生しています。
【K帯受信サブシステム・WBR据付調整工事】
K帯受信サブシステムは、工場試験後、2024年3月に美笹局に搬入され設置されました。以下が設置後の写真です。
【K帯低雑音受信増幅装置の据付調整工事】
K帯低雑音受信増幅装置は、増幅器等を収納した真空容器内をマイナス269℃(4K)で冷却し、ROMANからの信号を大幅に増幅します。この装置はホーン、増幅部、真空ポンプ、コンプレッサー及び制御部から構成されており、これらの設置が2024年8月に完了しました。
ホーン及び増幅部(写真上部の銀色の部分に格納されています)↓
冷凍機用コンプレッサ(ホーンや増幅器が入っている銀色の容器内をマイナス269℃まで冷やすためのものです)↓
真空ポンプ(ホーンや増幅器が入っている銀色の容器を真空状態にするためのものです)↓
制御部(ラックの下部にあるグレー色の装置)↓
【系間インタフェース試験】
各装置及びサブシステムの単体での試験完了後に、それぞれを組み合わせた1対1の接続及び動作試験を2024年9月末までに完了させました。
【インテグレーション試験】
インテグレーション試験は、以下の3段階に分け2024年10月〜2025年前半の期間で行います。
- 美笹局内総合試験:美笹局内に閉じて各設備を組み合わせた試験を行います
- ROMANとのRF(電波)適合性試験:ROMANから出力した信号を美笹局に入力して所定のフォーマットで出力できるか確認します
- NASAとの総合試験:美笹局とNASAゴダード・スペース・フライトセンターを接続してデータ伝送が行えるか確認します
2024年10月現在、美笹局内総合試験を実施しています。
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