高速再突入技術
将来の惑星探査においては惑星からのサンプルリターンや大気を有する惑星の探査のため,大気に突入しサバイバルできる機体の開発が急務であるとの認識のもと,本格的な大気突入技術の習得を目指して研究・開発が始められたのは,1992年に開始されたEXPRESS計画であった。打上げこそうまくいかなかったものの,研究開発過程において多大なlessons learnedがあったし,偶然にも回収された機体の解析からも得るところが大きいものであった。
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「はやぶさ」に搭載されたカプセル機体(矢印)
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高速再突入技術の中身は,狭義には飛行中に生じる高温大気からの熱入力を予測することや,それらから機体を保護する耐熱構造であるが,広くはそれらを最適化する軌道設計,さらにはミッション機器の搭載性などを一体としたシステム設計技術から成るものであり,カバーする範囲は広い。例えば,機体形状についても,柔軟構造により抵抗係数を意図的に大きくし,減速効率を高めることにより耐熱構造に対する要求を緩和して,ミッション重量比を稼ぐ機体の開発など,多様な研究開発の要素がある。
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気球実験でゴンドラにつられた柔軟構造体
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EXPRESS後は,サンプルリターンを目指したMUSES-C計画(現「はやぶさ」)が立ち上がり,それに向けて新たな研究開発が行われ,現在完了している。冒頭にも述べたように応用範囲は広く,金星探査の検討の際には,金星気球を内蔵し降下途中で放出する突入機を検討したのをはじめ,次期工学ミッションの候補として,木星探査における突入プローブの検討が現在進行中である。さらに,地球へのサンプルリターンもますます盛んに計画されるものと考えている。例えば,月探査においても,現在計画されている「その場」観測の次はサンプルリターンの計画が控えており,再突入機の研究開発はますます盛んになるものと考えている。
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実験結果と計算結果
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